(※画像はイメージです/PIXTA)

近年では、私たちが生活を営むために必要なエネルギーにも環境保護の観点が不可欠となっています。ここでは「地産地消エネルギー」「潮汐発電」について詳しく解説します。※本記事は、齋藤勝裕氏の著書『脱炭素時代を生き抜くための「エネルギー」入門』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

工事は大変だが、アイデアは単純明快な「潮汐発電」

◆潮汐(ちょうせき)発電◆

潮の干満という膨大なエネルギーを利用する発電。問題は、適地が少なく建設費も巨大なこと。

 

潮汐とは、海の潮の満ち引きのことです。この繰り返しは基本的に1日に2回ずつあり、満潮も干潮も1日に2回ずつ繰り返します。

 

●潮汐のエネルギー

 

海釣りが好きな方はご承知のことですが、潮の満ち干(ひ)は複雑であり、日本の場合、変化する海面の高さの大小によって、大潮、小潮、若潮…と、事細かに分類されています。

 

その一定海域に存在する海水の量は膨大なものであり、それを沖(遠洋)に引かせたり、反対に沿岸に押し寄せさせたりするエネルギーは凄まじいです。このエネルギーを発電に利用しようというのが潮汐発電です。四方を海に囲まれた日本にとっては、ぜひとも有効に活用したいエネルギーです。

 

潮の干満はいうまでもなく、地球と月の位置関係から起こる現象です。すなわち、月が頭上に来た時と地球の裏側に行った時には海水が頭上に引き寄せられ、海水面が高くなって満潮となります。それに対して月が地球の横側に行った時には海水は引き寄せられ、自分のいる側は海水が少なくなって干潮となります。この干満の差は地形によって影響されますが、大きなところでは干潮と満潮で海水面が20mほど異なるというから驚きです。

 

●潮汐発電のしくみ

 

潮汐発電所の模式図は以下に示した通りです。すなわち、干満の差が大きな場所に適当な小型の湾があったとします。満潮時には湾は海水で満たされて海面は上昇し、逆に干潮時には海水はなくなって海面は低下します。もし湾の入り口をダムで塞ぎ、満潮時に開いて海水を入れ、干潮時に入り口を閉じると、湾には大量の海水が滞留し、湾内の海面は上昇したままになります。

 

[図表]潮汐発電のしくみ

 

ここで水門を開くと、滞留した海水は湾外に流れ出ようとし、水門に設置されたスクリューが回転して発電機を回し、発電することになります。立地の高低差を利用した普通の水力発電に対して、これは立地の水平差を利用した発電といえそうです。工事は大変ですが、アイデアは単純明快です。問題はこの模式図のように干満の差が大きく、かつ湾口が適当な大きさの湾が見つかるかどうか、という点に尽きます。

 

既存の施設としては、世界最初の潮汐発電所として知られるフランスのランス発電所(出力24万kw)や、ノルウェーのクバルスン発電所(70万kw)などが知られています。日本でも有明海の一部では干満の潮の差が6mに達することから、潮汐発電の可能性があるといわれています。しかし、漁業や農業への影響はもちろん、環境に対する影響が大きいことから、実現には問題があるようです。

 

 

齋藤 勝裕

名古屋工業大学名誉教授

 

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