(※画像はイメージです/PIXTA)

私たちの社会は明るく開けた「高原社会」へ軟着陸しつつあるという。実現のカギとなるのは、システムを根底からぶっ壊すようなショックではなく、社会変革というにはあまりにも些末な取り組みだといいます。なぜなら現在の状況を生み出しているのは、私たち自身だからです。いま、私たちは何をすべきなのでしょうか、山口周氏が解説します。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

誰もが自分のペースで夢中になれる仕事に没頭

このようなコンサマトリーな社会においては、「便利さ」よりは「豊かさ」が、「機能」よりは「情緒」が、「効率」よりは「ロマン」が、より価値のあるものとして求められることになるでしょう。そして、一人一人が個性を発揮し、それぞれの領域で「役に立つ」ことよりも「意味がある」ことを追求することで、社会の多様化がすすみ、固有の「意味」に共感する顧客とのあいだで、貨幣交換だけでつながっていた経済的関係とは異なる強い心理的つながりを形成することになるでしょう。

 

貨幣交換だけでつながっていた経済的関係とは異なる強い心理的つながりを形成することになるという。(※画像はイメージです/PIXTA)
貨幣交換だけでつながっていた経済的関係とは異なる強い心理的つながりを形成することになるという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

それはたとえば……

 

・市井の人々が、あたかもアーティストが衝動に突き動かされて作品に関わるように、それぞれの活動に関わってモノやコトを生み出していく社会です。

・放っておけない世の中の問題を見つけ、それを解決することをビジョンとして掲げる人や組織に、共感する人々が集まって高いエネルギーを放射する社会です。

・目的意識を欠いた無限の成長というナンセンスを求めるような組織には誰も集まらず、誰もが自分のペースで夢中になれる仕事に没頭する社会です。

・見せびらかしや優越のためでなく、自分の生活を真に豊かで瑞々しくしてくれるモノやサービスを購入し、それらによってまた自らの感性や知性も育んでいく社会です。

・未来のために今を、あるいは組織のために個人を犠牲にしろと強迫され、人の尊厳が蔑ろにされることのない社会です。

・困難にある人が置いてけぼりにされ、周囲の人が罪悪感をもちながらも「構っている暇などないから」と俯いて見て見ぬ振りをしなくても良い社会です。

・誰もが自分が住みたい場所に住み、働きたい仲間と働いて、労働の喜びを感じられる社会です。

・子供たちが、資本主義社会の効率的で高機能な部品となるために、ではなく、高原の社会をより豊かで瑞々しいものにするための創造性を育むために、教育が行われる社会です。

・経済成長のためではなく、美しい風景のなかで人々が人生を送るために、さまざまな公共の開発・投資が行われる社会です。

 

私たちの社会は、200年にわたって続いた熾烈な文明化の競争、効率化への強迫から、ついに解放され、さらなる上昇を求められることのない穏やかな高原社会に到達しました。

 

このような高原社会において、かつて私たちが経験したような高成長を志向すれば、それは必然的に非倫理的な領域への侵犯を伴うことになってしまいます。このような社会において、私たちの経済活動は、文明的な便利さを向上させることから、文化的な豊かさを向上させることへと転換し、経済活動と社会の豊かさの増進を同調させていくことが求められます。

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ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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