(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「ESG(環境、社会、企業統治)」の観点から投資対象を選別して買いと売りを組み合わせる「ESGのロングショート」を得意とするヘッジファンドの投資戦略について見ていきます。

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「非ESG関連」と「ESG関連」の指数の価格差に注目

たばこ、アルコール、武器、化石燃料、ギャンブル関連企業等で構成された「非ESG関連指数」が「ESG関連指数」をアウトパフォームする(上回る)局面においては、非ESG関連指数をショート、ESG関連指数をロングする。これは、市場がESG投資に対し長期的に合理的であり、ESG価値は平均回帰的な動きを示すとの考え方をベースとする「ESGレラティブバリュー戦略」と言える。

 

一方、堅調な非ESG関連指数をトレンドフォロー(追随)的にロングし、相対的に軟調なESG関連指数をショートするロングショート戦略は、どちらかと言えば、ESG投資におけるCTA戦略の発想に近い投資手法と言えよう。

「新興国」のボラティリティを伴う株安を狙う

新興国のなかには、環境に負荷をかける化石燃料や鉱山資源で財政の一部をまかなっている国・地域もある。その上、劣悪な労働環境、安い人件費、環境汚染・破壊の下、それらを競争優位として外貨を稼ぎ、生活水準を維持している発展段階の国・地域もある。

 

生活水準が向上し、産業のサービス化が進展している先進国を中心にESG投資は広がっていると言えるが、このような先進国の基準を新興国に無理に適用した場合(ESGマネーの発言力・影響力が強まった場合)、本来の成長や発展のために必要な資金が供給されにくくなり、新興国の安全や安定を脅かしてしまうことも考えられる。

 

そのような状況下では、ボラティリティが伴う株安、債券安、通貨安などが起こりやすくなるため、ESGを踏まえたグローバルマクロの視点から大規模なショートをかけるヘッジファンドも出てこよう。

 

少し極端に言えば、新興国の地域、歴史、社会、文化、政治などを総合的に考慮せず、経済の発展段階に応じた"必要悪"を認めないロング中心のESGマネーが不安定なきっかけを作り、それに乗じてESGヘッジファンドが大規模なショートをかける構図が起こりうるということである。

 

仮にその新興国がデフォルトする(もしくは債務危機が生じる)ことで経済が混乱する一方、ESGのロングファンドはダウンサイドリスクを回避することで通常のアクティブファンドより相対パフォーマンスを高めることができる。

 

また、グローバルマクロ的なESGショートファンドはデフォルトに行き着くまで(債務危機が落ち着くまで)のボラティリティの高まりにより大きな利益を獲得する機会が得られよう。

 

ただ、ジョージソロス率いるグローバルマクロ系のヘッジファンドが政治、経済、為替制度の歪みをつき、ポンドの売り崩しを仕掛けたことにより大きな利益を得たことは有名である。しかし、このようなグローバルマクロ的なESGヘッジファンドのショートにより、新興国の社会や経済の混乱を伴う形で多大な利益を上げた場合、本来のESG投資の意義と投資パフォーマンスとは一体何なのかが問われることになるだろう。

 

■まとめ

以上見てきたように、ESGロングショートを活用するヘッジファンドのなかにも多様な切り口・考え方・投資戦略がある。そのため、自分の投資理念や投資スタイルに合ったESGヘッジファンドを選択することが重要であろう。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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