(※写真はイメージです/PIXTA)

働き方が急速に変わりつつある中でも、日本の「年功序列」は健在です。老後不安が大きく叫ばれるようになった現代において、長く勤めていれば昇進・昇給するシステムに安心感を覚える人も少なくないでしょう。しかし、このような忠誠心・協調性を求める働き方は、労働者にとっても組織にとっても「リスクでしかない」という事実をご存じでしょうか。※本記事は、谷本真由美氏の著書『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

海外と日本では「職場を転々とする人」の評価が真逆

さらに重要なのは、様々な会社や業界の仕事に関わることで、経験を得ることが可能です。様々な場所で働いたことが「経験豊富で素晴らしい」と評価されるのです。雇う方は、他の組織での経験やノウハウをその人を通して得られるわけですから、その人に払う報酬の何倍もの知識を得られるのです。

 

例えば、私がロンドンのある石油関係のプロジェクトに関わった際に、会社側が大喜びして採用したのは、30社以上での経験がある専門家でした。この人は様々な国を渡り歩いて働いている人で、経験が豊富です。賃金は業界のトップレートです。会社側のプロジェクトマネージャーは、「こういう人が見つかって助かったよ」と大喜びです。海外の言語や文化、規制にも強いので、プロジェクトの人件費以上の良い買い物でした。こういう人は様々な国や組織の人を知っているので、仲良くすることで、その人経由の人脈も広がります。

 

知識産業では、技術や市場の移り変わりが激しく、昨年のやり方でも「古い」といわれてしまうことがあるので、常に、様々な組織、技術、知識に接触し、働く方も職場も、新陳代謝をきちんとしないと、死活問題に関わるのです。

 

ところが日本の場合は、多くの会社では、そもそも高収入の専門家を特定のプロジェクトに短期間で雇う、という習慣が定着していません。様々な組織を渡り歩く人は「忠誠心がない」「協調性がない」というレッテルを貼られてしまい、会社や同僚からは、ネガティブな印象を持たれます。日本の会社は、その人が何を生み出すかよりも、会社というコミュニティの一員になり、長期間、その組織に対して忠誠を誓うことを重視するからです。

 

しかし、物事の移り変わりがこれだけ激しい時代に、そういう働き方を求めるのは、組織だけではなく、働く人の新陳代謝を阻害しているだけです。何十年も同じ組織にいることは、その人自身にとってもリスクですし、その組織にとってもリスクにすぎません。

 

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日本人が知らない世界標準の働き方

日本人が知らない世界標準の働き方

谷本 真由美

PHP研究所

「働き方」にこれほど悩むのは日本人だけ⁉ 好評ロングセラー、『日本人の働き方の9割がヤバい件について』を大幅に加筆してアップデート! 日本、イギリス、アメリカ、イタリアの現地組織での就労経験を持つ著者が、海…

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