(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2021年7月13日に公開したレポートを転載したものです。

米国の株価は「金融レジーム(体制)」に左右される

金融・財政レジームとは昆虫の殻に例えることができよう。技術と生産性向上に伴う経済実態の拡大に、古い殻である旧金融・財政レジームが対応できなくなると、新しいレジームが登場する。

 

金本位制に縛られた通貨増発の制約が1929年からの世界大恐慌を引き起こし、管理通貨制度への変態が余儀なくされた。また1980年前後の米国不況は、ドル金交換停止によって可能となった世界通貨ドルの増刷(レーガノミクス)で回復し、それが新ブレトンウッズ体制(全世界管理通貨時代)に帰結した。

 

米国の歴史を振り返れば、米国経済の盛衰、NYダウ工業株の100年の趨勢が、金融レジーム(=紙幣増刷メカニズム)によって変転してきたことが明白である。

 

[図表10]は実質NYダウ(NYダウを物価指数で除したもの)であり、購買力としての株式価値を示している。過去100年間で3つの大幅な上昇の波があり、今第四番目の上昇の唯中にある。

 

[図表10]NYダウ実質株価と経済レジームの推移
[図表10]NYダウ実質株価と経済レジームの推移

 

3つの波とは

1.1910~1920年代(金本位制の下での古典的自由主義体制下での上昇)

2.1950~1960年代(各国管理通貨制度→国内紙幣増刷体制、の下でのケインズ経済体制下での上昇)

3.1980~1990年代(世界管理通貨制度→ドル散布体制、の下でのグローバル新自由主義体制下での上昇)、である。

 

そして今、4.2010年から新たな上昇が始まっている。

 

それはQE(量的金融緩和)という紙幣発行の新しい仕組み、株式などの市場の許容度に即した通貨発行手段を用いた、市場本位制度とも考え得るものである。それは政府部門による需要創造を推進力とする新グローバル・ケインズ体制とでもいえる仕組みになっていくのではないか。

 

FTPL(物価水準の財政理論=シムズ理論)、MMT(ModernMonetaryTheory)などの財政出動を正当化する理論が台頭しているのは、まさしく金融緩和と財政政策の二つのエンジンによる需要創造が必須・適切な時代の到来を示唆していると考えられる。

 

日本の初期のアベノミクスやトランプ氏によって財政金融総動員のマクロ政策が開始されたが、バイデン氏とパウウェルFRB議長による財政金融一体緩和政策は『新ケインズ政策』を全面展開させるものと言える。

 

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