日本女性の大半が「男は仕事、女は家庭」を容認
話は前後しますが、本項の冒頭で述べた日本国内の夫婦分担の比較研究で、妻の69パーセントが「適当と思う以上に自分の分担量が多い」と感じていました。それなのに、同じ調査で、日本女性のおよそ半数が、家事・育児の分担量の少ないパートナーを「満足」と評価していることがわかっています。
世界で最も分担の不公平感や不満を〝自覚〟しているにもかかわらず、夫に対する日本女性のこの〝評価〟は驚きです。職場での心身の負担が多い仕事をしながら、夫は家庭でもよくやっていると、妻が心から満足しているのか、あきらめて「これで十分」と納得しているのかどうかわかりませんが、妻の多くは粛々と受け入れているのです。
先に紹介した職場スタッフのAさん(33歳)は、こんなことも言っていました。「家事・育児を分担しない亭主でしたが、たまにゴミ出しなんかしてくれると、心から『ありがとう』と口に出して感謝していました」。さらに、「家族のために働いてくれているのですから、私が我慢すべきだと思ったからですが、振り返れば、手伝ってくれるようにもっと積極的に依頼すべきだったかもしれません。夫婦のコミュニケーションの機会を、結局なくしてしまったのですから」とも。
裏返せば、「男は仕事、女は家庭」の性別役割分業意識が依然根強い日本社会で、男性にとっては、家庭をかえりみず自分の思い通りに仕事に専念できる環境が公然と残っていることになります。私自身がそんな50代半ばまでの結婚生活25年間を駆け抜けてきました。
非難されることを承知で正直に述べます。私は、妻が家庭にいることが当たり前で、家事や育児、さらには介護施設に入所させた私の母への対応が妻の〝仕事〟であることに何ら疑問をもたなかったと思います。そのことで妻に心からの感謝や労いの言葉をかけてきたとは到底言えません。今、背筋が寒くなる恥ずかしさをおぼえています。
50代半ばで四国から横浜に転職することになっても、一緒に付いて来ることに妻は同意しませんでした。そんな状況もしかたないと思えるほど、夫婦間の交流は冷え込んでいたのだろうと思います。
終身雇用制度や年功序列制度が既に崩壊しており、女性の社会進出が著しい今日でさえ、男性偏重社会はしぶとく生き残っています。日本の夫は、今なお「一家の大黒柱」としての強い自覚があり、家庭内のことは全て妻に任せて、仕事だけに集中することを期待され、実践してきた歴史があります。しかし、若い世代を中心に、男性の長時間労働に違和感をおぼえ、男性ももっと積極的に家事・育児や親の介護を分担すべきだと考える男女が確実に増えているのです。
【ポイント】
若い世代を中心に、長時間労働を改善し、男性も家事・育児に積極的に参加すべきだと考えるようになっています。それでも日本の夫は世界で最も家事・育児・介護の分担が少ないのです。パートナーである女性もそうした男性を容認する傾向があり、「男は仕事、女は家庭」の性役割分業観や男性偏重社会が依然しぶとく生き残っています。男性の皆様は、妻の突然の外出などで「俺の食事は?」と絶対に口にしないようにしましょう。
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清水 一郎
おひさまクリニックセンター北 院長
医学博士。性差医療専門医。大阪府出身。愛媛大学医学部卒業。
米国ペンシルバニア大学医学部博士研究員、徳島大学大学院消化器内科准教授、聖隷横浜病院消化器内科部長などを経て、現在、おひさまクリニックセンター北院長。1998年日本消化器病学会奨励賞、1999年Liver Forum in Kyoto研究奨励賞を受賞。
著書に、『女性肝臓学入門』『老いない美人 女性ホルモンできれいになる!』(以上、西村書店)、『患者だった医師が教える糖尿病が消える「ちょっとした」キッカケ16』(幻冬舎ルネッサンス)、『ストップthe熟年離婚』(幻冬舎MC)などがある。
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