(※写真はイメージです/PIXTA)

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

アートはものを離れて、行為を通した活動となった

現代アートは国際的な言語であり、対話の場であるので、日本人が考えている以上に世界的な関心を呼んでいる点が気がかりです。現代アート関係者やファンは、リベラルな進歩派が多いので、今後の日本の文化の国際的な評価を考えると丁寧に対応し、答えを出しておく必要があるでしょう。

 

ネット社会は誰でも気軽に政治に参加できる場をつくり出しましたが、一方で簡単にお互いがぶつかり合う分断の助長を生み出す回路もつくり出しました。自由であるからこそ、一人ひとりに高い道徳心やときに自己抑制していくような自制心が必要な時代でもあるようです。繰り返し「表現の自由」という意味から今回の問題を解こうとしている風潮がありますが、単純な言葉の繰り返しでは対処しきれない、そういう時代に入ってきました。

 

ボイスの話に戻ると、社会活動としてアートを提唱してから半世紀が過ぎようとしているのですが、さらに民主化が進んだ社会になりボイスが目指していた社会に近づいているようにも思います。ボイスは、誰もが芸術家であると提唱し自由国際大学では教師/学生という区別のない、社会変革について自由に討論する場をつくりました。

 

私が学生時代にも東京藝術大学で印象に残る講義を行っています。先ほどもいいましたが、ネット社会は自由に誰もが政治参加できる機会を提供して、政治をお茶の間の話題に変えてしまったところがありますが、ボイスが目指した政治の民主化とは少々違った姿になっていなくもないと思えるのです。

 

ポピュリズムが蔓延し、その危うさも目につき始めています。左右どちらの意見も自由にいえる時代だからこそ何気ない言葉が取り返しのつかない方向に人々を駆り立てていく、危うい時代ともいえます。ボイスがこのような政治の時代を望んだかどうかは別として、政治が日常に接近してきていることは確かです。

 

ボイスによって、アートはものを離れて、行為を通した活動となりました。またアートを空想世界のものと考えずに、実際の社会の変革の道具にしていきました。

 

後でご紹介するリレーショナル・アート、ソーシャル・エンゲイジド・アート、コミュニティ・アートなど、対社会のアート活動の原点は、ヨーゼフ・ボイスにあります。

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

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