(※画像はイメージです/PIXTA)

「コロナウイルスの感染が疑われる客」の宿泊を拒否できるか否かは、ホテル・宿泊業界にとって非常に深刻な問題です。多くの宿泊客を迎えたい思いと、集団感染のリスクの板挟みとなる経営者は少なくありません。ホテル・旅館をはじめとする宿泊業を専門分野とする、弁護士法人横浜パートナー法律事務所の佐山洸二郎弁護士が「宿泊拒否」に関する問題について解説します。

ホテル・旅館経営者が頭を悩ませる「集団感染」リスク

前述の(1)伝染性疾病にかかってることが明らかなとき、が新型コロナウイルスに感染している方の宿泊拒否に関係している条項となります。新型コロナウイルスは、まさに「伝染性の疾病」である可能性が高いです。

 

ですので、「新型コロナウイルスに感染していることが明らか」である場合は宿泊拒否ができるということになります。

 

ただ、そもそも「新型コロナウイルスに感染していることが明らか」な場合なんて、あるのでしょうか。まさにこの点を巡って、世のホテル・旅館経営者は頭を悩ませているのです。

 

極端な話、「陽性の検査結果を携えてくる人」がいればまさに宿泊拒否の対象になるかと思いますが、実際にはそのようなことはほとんどあり得ないですよね。

 

そのためホテル・旅館としては、検温結果や、咳などの「他覚症状」、その他「自覚症状」の申告を求めて、総合的に判断しなければならないわけです。

 

ホテル・旅館としても、せっかくお申込みをしてくださったお客様を泊めたいのはやまやまです。その一方で、万が一でも館内で集団感染が発生してしまえば、致命的なダメージを受けることは間違いありません。

 

やはり現実的には、宿泊拒否に踏み切らざるを得ない場合があるのではないかと思います。

 

これは現在の旅館業法では結論づけられない問題ですが、このルールができた歴史的経緯や、違反してしまった場合のペナルティなどをすべて総合して、その都度判断していくことになります。

「伝染性の疾病」以外にも…宿泊拒否できるケースとは

前述の「宿泊拒否をしてもよいケース」のなかでも、(2)賭博、その他違法行為又は風紀を乱す虞があると認められるとき、はわかりやすいですね。この条項にあたる場合として代表的なのは「賭博をしようとしているとき」「宿泊施設に対して暴力的要求行為が行われたたとき」「大声や暴力を使って騒ぐなどしてほかの宿泊客に迷惑をかけるとき」などがあります。

 

そして(3)宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき、のうち「宿泊施設に余裕がないとき」というのはそのままですが、その他条例で定められている代表例として「泥酔してほかの宿泊者に著しく迷惑を及ぼすおそれがあるとき」などがあります。

旅館業法に違反すると…課される「3種のペナルティ」

上記のように、旅館業法では「宿泊拒否は原則として禁止」されており、例外的に宿泊拒否をしてよい場合もそこまで多く規定されているわけではありません。

 

では、これらのルールに違反するとどうなってしまうのでしょうか。

 

大きく3つに分けると、

 

①宿泊申込者に対する損害賠償責任(民法709条)

②50万円以下の罰金(旅館業法11条)

③行政機関からの指導

 

などがあります。

 

民事、刑事、行政と、3種類のペナルティが生じる可能性があるのです。

 

これまで宿泊拒否を巡って、裁判などに発展して争われたケースも存在します。

 

極端な例だと、「外国人というだけで一律に宿泊拒否」をしたケースや、「男性カップルというだけで宿泊拒否」をしたケースでは、損害賠償責任が生じたり、行政指導に発展するなどの事態となっています。

 

「出禁」や「門前払い」が禁止されていることを意外に思われた方もいらっしゃるかと思いますが、「行き倒れや野垂れ死にが現実のものだった時代」を考えると、たしかに納得できるルールではあります。

 

早く新型コロナウイルス禍が収束し、「宿泊拒否ができるのかどうか」という相談や悩み自体が無い時期がくるのが待ち遠しいです。

 

 

佐山 洸二郎

弁護士法人横浜パートナー法律事務所

 

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