※写真はイメージです/PIXTA

LLP(有限責任事業組合)の組成自体は節税になりませんが、LLPによって1つのビジネスに「法人」と「個人」2つの人格をもたせることで、両方の節税対策を行うことが可能になります。具体的にどのような対策が取れるのか、見ていきましょう。AXESS総合会計事務所の代表税理士・阪口雅則氏が解説します。

 

 ⑥事業用車両の減価償却による経費化 

 

個人事業主(所得税): △

   法人(法人税): ○

 

個人事業で車両を使用する場合、事業共用割合に応じた経費化が求められます。一方法人名義の場合、基本的な考え方は所得税、法人税ともに大差ありませんが、法人名義の車両については、事業共用の割合が問われることは比較的少ないため、減価償却費の全額が経費となります。

 

もちろん法人であっても、趣味嗜好性の高い車や高額過ぎる車、そして2台目以降事業上の必要性が疑われるものなどは、税務上費用として認められない可能性が高くなります。

 

 

 ⑦借上げ社宅制度 

 

個人事業主(所得税): ✕

   法人(法人税): ○

 

借上げ社宅による節税とは、会社名義で借りた住居を役員または使用人に貸与する際、その実際の家賃よりもかなり低い金額を自己負担すれば、残りは会社の経費にできるという制度です。そのため、個人事業者が自分のために住居を賃借しても、経費化することは認められません。なぜなら、社宅の供与は福利厚生と考えられ、所得税では事業者本人の福利厚生という考え方が認められていないため、利用することはできません。

 

 

 ⑧出張に伴う日当 

 

個人事業主(所得税): ✕

   法人(法人税): ○

 

日当とは、出張に伴い発生した諸費用は会社が負担しても、個人の所得として課税されないという制度です。旅費規程で定めれば、実際の費用精算でなくとも、支給(1日当り3,000円など)された金額は所得税の非課税として扱われます。

 

こちらも社宅同様に役員または従業員に対して支払われるものに限定されるため、個人事業主は利用することができません。

 

 

 ⑨退職金の退職所得控除と1/2課税 

 

個人事業主(所得税): ✕

   法人(法人税): ○

 

退職所得は退職所得控除額(勤続年数20年までは年40万円、20年超は年70万円)を差し引かれ、さらに所得金額を1/2に軽減した上で所得税が課されますので、節税効果は大きいと言えます。こちらも個人事業者では利用することはできません。

 

 

 ⑩経営セーフティ(倒産防止)共済掛金の経費化 

 

個人事業主(所得税): ○

   法人(法人税): ○

 

国の共済制度で節税アイテムとしても広く知られている経営セーフティ共済とは、年間最大240万円の掛金が経費となり、累計800万円まで経費化することができます。さらに40ヶ月以上継続していれば、その後解約した際、100%返金されることから、節税の王道と言えます。

 

こちらの制度は個人事業と法人を持っていれば、双方で加入することができますので、上述の経費化できる金額が2倍の年間最大480万円、累計1600万円ということになります。

 

すなわち、個人事業または法人のどちらのメリットというものではなく、双方の人格を有していることがメリットと言えます。

 

※ 加入は事業開始1年以上経過していることが要件となります。また、解約時は利益として課税が生じますので、ご注意ください。

 

 

 ⑪売上の分散による消費税納税義務回避 

 

個人事業主(所得税): ○

   法人(法人税): ○

 

LLPにより事業を行った場合、利益(所得)が組合員に分配されると説明してきましたが、正確には売上や経費がそれぞれ損益分配割合に応じて分配されることとなります。従いまして、消費税の課税事業者になるか否かは、

 

LLPの課税売上 × 個々の組合員の損益分配割合 ≶ 1,000万円

 

で判断されることとなります。そのため税込年商1800万円のビジネスを個人と法人が損益分配割合各50%だった場合、各人の課税売上は900万円となり、1000万円未満になることから、個人と法人のどちらも消費税の免税事業者となります。

 

しかし、今後消費税のインボイス制度が令和5年10月から開始が予定されているため、節税効果は薄れるものと見込まれています。

 

 

いかがでしょうか? 所得税と法人税の特徴を理解しつつ、LLPを使って個人事業と法人の2つの人格をもって事業を展開させていくという発想も面白いと思います。

 

 

阪口 雅則

AXESS総合会計事務所 代表

 

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