(※写真はイメージです/PIXTA)

ヘッジファンドのリスクを計測する指標に、「VaR(バリューアットリスク)」「ES(期待ショートフォール)」「尖度(せんど)」などがあります。今回は、これらの計測指標や他の戦略を組み合わせて、「ヘッジファンド投資」のリスクを管理する方法について考えていきます。※本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。

ヘッジファンドの「リスク計測」の方法

ヘッジファンドのリスクの計測については、実務上は正規分布を前提とした標準偏差だけでなく、下方偏差に加え、「VaR(バリューアットリスク)」、「ES(期待ショートフォール)」、「歪度」、「尖度」などを基に複合的に判断することが多い。

 

ここでは、VaR(バリューアットリスク)、ES(期待ショートフォール)、尖度の3つについて簡単に説明したい。

 

◆VaR(バリューアットリスク)

VaR(Value-at-risk)とは、ある特定の信頼水準における最大損失額を表し、テールリスクを捉えようとする指標のことだ。信頼水準は95%や99%といった値が主に用いられ、その信頼水準で起こりうる損失の最大値を示す。とはいえ、この指標を用いる欠点として、VaRよりも大きな損失となった場合、その損失額がどの程度巨額なものになりうるのかがわからない点がある。

 

◆ES(期待ショートフォール)

VaRをカバーする指標として、「ES(Expected Shortfall)」がある。期待ショートフォールとは、損失がVaRを超える条件のもとでの期待損失額を表し、想定を超えるテールリスクに対応するための一つの手段となりうる。そのため、ヘッジファンドの実務においては、VaRよりESが使われることが多い。

 

◆尖度

「歪度」が分布が正規分布からどれだけ歪んでいるかを表す統計量であるのに対し、「尖度」は分布が正規分布からどれだけ尖っているかを表す統計量である(参照:『「歪度管理」を活用して日本株の長期上昇トレンドに乗る方法』)。

 

正規分布より尖った分布のときには平均値から大きく乖離した利益や損失を計上する可能性が高まる。よって、尖度が大きくなるにつれ、テールリスクが高まっていると捉えられよう。

「レラティブバリュー戦略」のヘッジファンドの注意点

「レラティブバリュー戦略」は、割高と割安などの相対価値を見極め、ロングとショートを組み合わせることによって生ずる価格差で収益を上げる投資戦略のことだ。わかりやすくいうと、市場は合理的であり、いずれ適正価格・本質的価値に戻る平均回帰をベースとした考え方を用いている。

 

しかし、レラティブバリュー系のヘッジファンドのなかには、突発的な危機などに直面した場合、負の歪度や大きな尖度が見られるものもあり、仮に最大ドローダウンに基づくロスカットや期中のファンド解約の動きが加わることで、さらに損失が拡大することもある。

 

そのため、レラティブバリュー戦略系のヘッジファンドを組み入れたポートフォリオにおいては、テールリスクに備え、歪度や尖度の管理が別途必要になる可能性がある点には留意したい。

 

■まとめ

以上のように、ヘッジファンドのリスクを管理するには、組み入れを検討、もしくはすでに組み入れているヘッジファンド戦略の過去の危機時の歪度や尖度の動向を把握すると同時に、グローバルマクロやCTAなどの異なるプロファイルの戦略を組み合わせてリスクを管理することも一案だと考える。

 

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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