(画像はイメージです/PIXTA)

遺言書が有効か否かは、遺言書の作成時点に「判断能力」がどの程度あったかにより決定されます。遺言者が認知症であっても遺言を残すこと自体は可能ですが、医師2人の立ち合いが必要となるなど、細かな取り決めが存在するため注意が必要です。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

医師が「判断能力の診断」を誤ることは滅多にないが…

それでは、成年後見人が付いたあとに書いた「遺言書をすべて取り消す」という遺言は有効でしょうか。

 

認知症で判断能力を失ってしまい成年後見人が付いたとしても、その後一時的にでも判断能力がある状態に戻り、医師2人が立ち会い、判断応力があると判断すれば、遺言書を有効に作成できるのです(民法973条)。

 

したがって、今回のケースでは、「遺言書をすべて取り消す」という遺言を作成するときに、医師2人が立ち会って、Aさんに判断能力があると判断していることから、成年被後見人が作成した遺言書が有効となる要件を満たしています。

 

とすれば、「遺言書をすべて取り消す」という遺言書は有効にも思えます。

 

しかし、医師2人が2人とも判断を間違えるということも、ないわけではありません。遺言作成時にAさんに判断能力がなかったこと、即ち、医師2人が「Aさんに判断能力があると判断を誤った」ことを証明できれば、遺言は無効となります。

 

よって、正解は③となります。

 

ただ、医師2人が2人とも判断を間違えるということは滅多にありません。また、裁判官は、通常、専門家の判断に従いますので、医師2人の診断書があれば、まず有効性を争ったとしても負けとなり、これを覆すのは至難の業ということとなります。

 

今回のケースも、筆者が実際に受任した事件を当事者のプライバシー保護の観点から内容を改変したものですが、筆者は、遺言作成当時の介護記録から、医師2人の診断書があっても成年被後見人に判断能力がなかった可能性があると裁判官に思わせることに成功し、有利な和解を締結することができました。

 

医師2人の診断書があるにもかかわらず、その判断が覆るということは普通ないことなので、依頼者にはとても喜んでいただきました。

 

 

高島 秀行

高島総合法律事務所

代表弁護士

 

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