(※写真はイメージです/PIXTA)

相続は家族の問題であり、必ずしも法律がベストな解決に導いてくれるとは限りません。円満に収束させるには、日ごろからの親族間の信頼関係の維持と情報共有、お互いの立場を思いやる気持ちが不可欠なのです。配慮に欠ける行動をとれば、大切な家族関係に大きな影を残すことになりかねません。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

長寿化社会の資産防衛…民事信託、成年後見人制度 etc.

長寿化が進むことで、「認知症対策」の重要性も周知されてきました。認知症になり判断能力が失われると、本人の意思能力が必要な手続き等が行えなくなるため、遺言書の作成や資産の売却等もできなくなります。

 

●「民事信託」で行う認知症対策

 

長寿化が進むにつれ、認知症の問題も増えていますが、その対策として「民事信託」活用されています。民事信託での対策が適しているケースとして、下記のようなものがあります。

 

①障害をもった子の将来の生活保障への不安解消しておきたい

②次世代だけでなく、次々世代以降の財産の承継先も決めておきたい

③株式を後継者に承継させたいが、まだ経営からは退きたくない

④自分の財産を、自身の判断能力が低下したあとや死後に有効活用してもらいたい

⑤高齢の両親を特殊詐欺等の被害から守りたい

⑥相続税の負担が心配なので、両親に代わって相続対策をしたい

 

●財産を管理する「成年後見人」は、慎重な判断のもとで決定を

 

高齢のため体が不自由になったり、認知症になったりした際、本人に代わって財産管理をするのが「成年後見人」です。家庭裁判所に申立てをして、弁護士や司法書士を成年後見人に選任することになります。

 

成年後見人は、本人の財産を維持することが原則で、財産は本人の生活や健康の確保、またはその資産自体を維持するためだけに使うことになります。いくら相続対策が必要でも、贈与や不動産対策などは本人の財産維持にならないという認識で、一切できません。不動産の処分なども明確な理由がないと行えません。

 

また、本人や同居家族の意思とは無関係に、第三者である専門家が成年後見人になるので、預金通帳などもすべて預けることになります。元気なときに家族の食費や生活費を負担する立場なら、そうした家計費を負担することは一般的ですが、成年後見人をつけてしまうと家族への消費などは一切認められません。

 

そして、成年後見人として業務にあたる専門家へは、本人の資産から毎月一定額、裁判所が許可した相当の金額を、成年後見人の報酬として支払わなければなりません。

 

置かれている状況から見て、本当に成年後見人が必要なのかどうか、また資産防衛の面からメリットがあるかどうかを熟慮し、慎重な判断をすることが大切です。

 

●介護に関する問題は、事前に親族間で情報共有しておくこと

 

高齢で体が不自由になると、生活をサポートが必要になります。しかし、介護ヘルパーや成年後見人には当然のごとく費用や報酬を払いますが、家族には相当な労力や犠牲を強いても、報酬を払う認識には至らないことが多く、しばしばもめごとの要因になります。

 

「介護してきた寄与分が認められない」として家庭裁判所の調停を申し立てる方は多く、筆者のところにも「被相続人に献身的な介護をして寄与してきたのに、いざ相続の段になるときょうだいは感謝しないどころか、寄与分の財産も渡そうとしません」という相談が寄せられます。

 

亡くなった方が遺言書を残しておらず、相続人間での話し合いもまとまらず、やむなく調停へ、といった経緯によるものです。


被相続人に尽くした人が「報われない」との思いを抱けば、それがトラブルの原因になりますから、生前に家族でルール作りをしておくことが望ましいでしょう。できれば本人が元気なうちに決めて遺言書に残し、家族で共有することが理想です。


民法改正で「特別寄与料」の請求もできるようになりましたが、これも事前にルール作りをして、共有しましょう。

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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    本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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