(※写真はイメージです/PIXTA)

相続対策の一番の目的は、相続時の税金を下げることです。しかし同時に、低リスクで投資をしたいというニーズも多いといいます。今回は、その両方を可能にする「不動産小口化商品」と「沖縄軍用地」について、税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が解説します。

リスクが少ない不動産投資商品「沖縄軍用地」とは?

(※写真はイメージです/PIXTA)
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読者のみなさんは、「沖縄軍用地」をご存じでしょうか? 基地返還のニュースなどで耳にすることがあるかもしれませんが、沖縄軍用地とは、沖縄県内の自衛隊基地や米軍基地内の土地のことを指します。沖縄県の軍用地は県面積の実に約8%を占めています。

 

また、沖縄には民公有地(国や地方公共団体が民間の個人・法人から借り受けている土地)の強制接収が行われた歴史的背景があるため、軍用地の多くは民有地が占めます。この民有地部分が売買対象として投資の対象になるのです。

 

軍用地というと、特別な土地をイメージしますが、誰でも購入することができます。また、沖縄に居住していなくても購入することができますが、あまり知られてはいません。沖縄県内では、物件情報が新聞などで広告されています。

 

沖縄軍用地投資の一番の特徴は、毎年安定的な借地料を受け取ることができる点です。借主は日本政府なので、未払いリスクもなく、一般的な不動産投資と違って、空室リスクがないという点も、非常にリスクの少ない不動産投資商品だといえます。

 

また、民間地と比べて固定資産税評価も低く、伊江島飛行場やキャンプハンセンなど免税となっている地域もあります。

 

借地料は、国によって各施設・地目や地域別に単価が決められており、毎年、7月か8月に年間借地料が支払われ、年に一度、単価の見直しがあります。借地料は現在、複利で毎年約1%値上がりしており、投資利回りは年間約2%前後になっています。高利率商品とはいえませんが、銀行に預金しておくよりはずっと魅力的なローリスク商品といえます。

 

また、沖縄軍用地は換金性が高い点も特徴の一つです。手堅い投資ということで非常に人気があるため、売りに出した場合、平均2週間から1ヵ月という短期間で売買が成立します。沖縄県内の地銀では、軍用地を担保にした個人向け融資商品などもあるほどです。

 

ただし、沖縄軍用地は安定した投資商品ですが、軍用地の返還という特殊な要因があります。嘉手納飛行場などの返還予定がないものは、長期的な賃料収入が見込めることになるだけですので、特に心配する必要はありません。

 

一方で、普天間基地のように返還が決まっている軍用地は、まとまった広さがあるため、返還後に大規模施設の再開発に転用されやすいという特徴があります。たとえば、2010年に返還された泡瀬(あわせ)ゴルフ場という米軍施設は、1,040万円で購入されたものが、返還後、「イオンモール沖縄ライカム」という商業施設に再開発されて、3,720万円で売却できたという事例もありました。

1億円の軍用地を購入した場合の「相続税評価額」は?

軍用地の相続税評価額は、次のような計算式で求めることができます。

 

「固定資産税評価額×公用地の評価倍率×(1-40%)=軍用地の相続税評価額」

 

公用地の評価倍率は、土地ごとに定められており、国税庁のHPに一覧表が載っています。それに加えて、借地の場合、借主の権利(地上権)を差し引いた形で評価額の計算が行われます。軍用地の場合、「公用地」かつ「存続期間の定めがないもの」として、地上権40%が適用されるため、先ほどの式になります。

 

たとえば、以下の条件で、仮に嘉手納飛行場の土地を購入したとして試算してみましょう(試算上の数値のため、実際の条件とは異なる可能性があります)。

 

◆嘉手納飛行場

・所在地:沖縄市

・土地用途:雑種地

・地積:1,000㎡

・年間借地料:約161万円

・軍用地取引倍率:62倍

・固定資産税評価額:10,260千円

 

【購入額】

軍用地の売買は、年間借地料に「軍用地取引倍率」という所定の倍率を掛け合わせて価格が決められます。

 

161万円×62=9,982万円

 

つまり、この軍用地の条件の場合、約1億円で取引される計算になります。

 

【相続税評価額】

公用地評価倍率表によれば、沖縄市の嘉手納飛行場の評価倍率は4.0です(嘉手納飛行場は沖縄市と嘉手納町で倍率が異なるので、表を見る場合には注意してください)。

 

出所:国税庁HP
【図表3】沖縄市の嘉手納飛行場の「評価倍率」 出所:国税庁HP

 

10,260,000円×4.0×(1-40%)=24,624,000円 

 

つまり、約1億円で購入した軍用地が、相続時には約2,500万円の相続税評価額まで圧縮されることになります。

 

恩納村の各施設のように、評価倍率が高い場合もありますので、軍用地投資する前には必ず試算することをおすすめしますが、多くの場合、沖縄軍用地は購入価格と比べて、相続財産評価額が大幅に下がりますので、相続対策としても有効だと考えられます。

 

■まとめ

今回は、ローリスクかつ投資効果も安定的に生み出し、かつ相続対策にも使える手法を紹介しました。社長の資産防衛はいかに手残りを増やすかがポイントとなります。事業活動に真面目に取り組んできた社長こそ、会社のみならず個人の相続税対策にも関心を持ち続けていただきたいと思います。

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表 公認会計士・税理士

 

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