一時111円台まで上昇…年初来の高値を更新「米ドル/円」7月以降の展開を大予想

6/28~7/4の「FX投資戦略ポイント」

一時111円台まで上昇…年初来の高値を更新「米ドル/円」7月以降の展開を大予想

先週、年初来の高値を更新した「米ドル/円」。このところ緩やかな上昇が続いていますが、7月以降はどのような展開が予想されるのでしょうか。今回は、FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、7月以降の為替を予想していきます。

「米2年債利回り」と「米ドル/円」の見通し

続いて、為替相場の行方を考える上でカギとなる、米2年債利回りの見通しについて考えてみましょう。米2年債利回りは、FOMCの後に急騰すると、一気に政策金利であるFFレートの誘導目標上限の0.25%を上回ってきました(図表5参照)。

 

)   出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表5]米2年債利回り (2021年1月~)出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

これにより、米2年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率はプラス60%以上に拡大しました(図表6参照)。2000年以降で見る限り、同かい離率がプラス60%を大きく上回ったことはほとんどありませんでした。その意味では、すでに「上がり過ぎ」懸念が強くなっている可能性がありそうです。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表6]米2年債利回りの90日MAからのかい離率 (2000年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

また、FRB(米連邦準備制度理事会)は現在ゼロ金利政策を行っており、それは政策金利のFFレートを0~0.25%を目標に誘導する政策です。すでに述べたように、米2年債利回りは先週、僅かながらこの誘導目標の上限を上回ってきました。

 

ゼロ金利政策を続けるなかでは、短中期金利の上昇にも限度があるというのが基本でしょう。たとえば、2008年のリーマン・ショックの後にも、FRBはゼロ金利政策を行いましたが、やがて金融緩和見直し局面を迎えました。しかし、米2年債利回りがFFレートの上限0.25%を0.1%以上といった具合に大きく上回るようになったのは、緩和の縮小、「テーパリング」を最初に示唆したとされる2013年5月のバーナンキ・ショックと呼ばれた出来事以降のことでした (図表7参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

[図表7]FFレートと米2年債利回りのスプレッド(2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

今回の場合、テーパリング開始の時期は未定です。このような状況では、米2年債利回りがゼロ金利政策の誘導目標上限0.25%を大きく上回る動きには、やはり限界があるのではないでしょうか。

 

さて、米ドル/円はこのところじわじわ上昇しながら、3月末記録した年初来の米ドル高値を更新するところとなりました(図表8参照)。この動きを90日MAからのかい離率で見ると、じつは5~6月の2ヵ月を中心に、かい離率1~2%といった狭いレンジでの上下動だったことがわかります(図表9参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表8]米ドル/円と90日MA (2020年4月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表9]米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2020年4月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

米ドル/円の90日MAは、足元で109円程度なので、その1%は約1円です。要するに、米ドル/円はたった1円のレンジを上下動しながら、そのレンジがじわじわ上方シフトする展開が続いてきたのです。

 

似たようなことが、今年1月にかけて半年以上も続きました。このときは、今年1月についにそのレンジを「上放れ」となると、その後102円台から一気に110円台まで米ドル一段高の大相場が起こりました。

 

足元の米ドル/円の90日MAからのかい離率1~2%レンジは110~111.2円程度。このレンジを抜けた方向に、4月にかけて起こったような大相場の再現が期待できるかもしれません。

 

ただ、これまで見てきたように、米ドル/円の新しい「道先案内役」である米2年債利回りは、もうしばらく上げ渋る可能性がありそうなので、米ドル/円も90日MAを2%上回った水準を大きく超えられない状況が続く可能性があります。





 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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