(※写真はイメージです/PIXTA)

感染症医である筆者は2020年1月、「武漢でジョギングはありだと思います」というツイートで炎上を経験しました。実際にリスクはありませんが、空気感染するものだと誤解していた人が多かったのです。科学的根拠なく恐れたり、あるいは安心したりするのは危険です。空気感染とはなにか、そして意味のある感染対策について見ていきましょう。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

新型コロナは飛沫感染と接触感染。空気感染はない

まず空気感染とは何かを説明します。ウイルスは空気に溶けて広がっていくわけではありません。あくまでもウイルスとして空中を浮遊する。それを人間が吸い込んだりすると感染します。

 

話したり、咳をしたりすると口からはたくさんの飛沫が飛びますが、空気感染に関係するのは直径5マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの1000分の1)以下の飛沫(これを「飛沫核」といいます)です。

 

飛沫核はきわめて小さいため、長時間にわたってふわふわと空気中を漂い、同じ閉鎖空間にいる人の呼吸器に直接入ったり、皮膚に付着したのちに呼吸器に入って感染をします。

 

この飛沫核によって起こるのが空気感染で、その代表格は麻疹(はしか)です。麻疹ウイルスは数十メートル、数百メートルと飛んでいきますから、感染経路の遮断はほぼ不可能です。近くに感染者がいたときは、麻疹ウイルスが自分の体内に入ってくることはまず防げません。したがって麻疹対策はワクチンだけです。

 

とはいえ、空気感染する病気は数えるほどしかありません。麻疹のほかに、結核と水疱瘡(みずぼうそう)も空気感染をしますが、一般の方はこの3つだけ覚えておけば充分です。

 

新型コロナも空気感染はしません。あるのは飛沫感染と接触感染。これは季節性インフルエンザも同じで、「空気感染はしない」という事実を知っておけば、ムダな恐れをなくせるし、ムダな行動もなくせます。

 

エアロゾルについても多くの議論がなされています。エアロゾルの定義からしてそもそも明確なものはないのですが、ここでは「ある一定の条件下で、比較的長い間、比較的長い距離を漂う飛沫」と考えてみてください。

 

こういう現象は、時々は起きます。実際、コンピューターのシミュレーションでもその発生が確認されています。

 

が、「起こりうること」と「起きていること」は区別しなければなりません。エアロゾルは、起きうる。が、そうしょっちゅうは起きていません。それは、数々の疫学研究が強く示唆することです。

 

つまり、エアロゾルがあっちこっちで発生していたら、ソーシャルディスタンスやゾーニングと言った基本的な感染対策が容易に破綻してしまうからです。でも、実際にはソーシャルディスタンスで感染リスクは激減しますし、ゾーニングは有効です。エアロゾルは発生しうるがめったに発生してはいないことの証左です。

 

ちなみに、新型コロナが母子感染をすることはめったにありません。特に、妊娠中のお母さんが感染しても、お腹の中にいる赤ちゃんに感染する、つまり、胎盤を介して感染することはほとんどないと考えられています。

 

ただし、出産後に感染した母親から子に感染するリスクはあります。これは授乳時の接触感染や飛沫感染という、一般的な感染経路ですね。

 

それから、妊婦さんが新型コロナに感染し、重症化すれば、お腹の赤ちゃんの死亡リスク(例えば自然流産のリスク)は上がるかもしれません。やはり、妊婦の感染防御はとても大事なのです。

 

 

岩田 健太郎

神戸大学病院感染症内科 教授 

 

 

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

なぜ、ノーベル賞科学者でさえも「コロナウイルス」が分からないのか? その理由は日本人独特の「検査至上主義」にあった! 人間の体は宇宙よりも謎に満ちていて、素粒子よりも捉えがたい。そのことを知らないで、「机上の…

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