(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金を充分貯めていたり、退職金をもらえる予定だったりしても、定年後も現役時代と同じように生活費を使っていると、「老後破綻」になりかねません。今回は、実際に相談があった2人の「メタボ家計」の事例をもとに、解決策を見ていきます。※本連載は、横山光昭氏の著書『長い老後のためのお金の基本』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

事例②:52歳男性、年収800万円も、貯金が700万円

先日、相談にきたご夫婦も、そんなケースでした。ご主人は52歳。年収は約800万円ですが、大学生の子どもが2人いるため、毎月の生活費に約45万円かかり、貯金は約700万円しかありません。ご夫婦は2019年に金融庁が発表した「老後に必要な貯金は2000万円」に驚いて、相談にいらしたのです。

 

話を聞いてみると、60歳定年のさい、退職金が1700万円ほどもらえる予定とのこと。であれば、大学の学費等もあるでしょうが、できるだけ貯金を減らさないようにして、今ある貯金の700万円ほどを加えることができると、2400万円の老後資金は確保できることになります。過剰に焦る必要はなかったのです。

 

しかし、油断は禁物です。年金生活に入れば、この人の場合、夫婦合わせて手取りで約20万円の年金収入しかありません。現在、夫婦の生活費はおよそ45万円。年間540万円かかっていますから、このままの支出を続けていけば、2400万円の老後資金はすぐになくなってしまいます。

 

もちろん老後生活に入れば、子どもの教育費はなくなるし、住宅ローンも払い終わっているでしょう。支出は減ると考えがちですが、そんな甘い見通しが実は危険なのです。今の60代、70代はひじょうに元気で活動的です。旅行に行ったり、趣味に打ち込んだり、老後を楽しむには、意外にお金が必要です。支出は減るどころか、増えることだってあります。

 

そこでこの夫婦には、今から毎月欠かさず貯金することを目指していただくことにしました。

 

今の支出を見直し、優先度の低い支出をカットしたり、支出の仕方をコントロールしたりしていきます。固定費も契約内容を見直すと、支出が減りやすいものです。そうして浮いた分を貯蓄に回していくのです。さらにボーナスは可能な限り貯金して、毎年100万円の貯金を目指すようにアドバイスしました。

 

そうすれば、この夫婦は定年までに800万円程度の貯金が増やせます。60歳の時点で、退職金とすでに貯めて維持できている手元の700万円ほどを足して、合計3200万円の資金が用意できるというわけです。

 

「今から貯金をしても間に合わない」とあきらめてしまうのは早すぎます。この夫婦のように、定年までわずかの年数しかなくても、コツコツ貯めれば、老後の生活は変わります。あきらめたら、そこで終わりです。

 

横山 光昭

株式会社マイエフピー代表取締役

家計再生コンサルタント

 

 

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長い老後のためのお金の基本

長い老後のためのお金の基本

横山 光昭

筑摩書房

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