Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

ルールを理解すればアートはかなり面白い

かなり高度で知的なゲーム

 

現代アートの出発点としてたびたび登場するマルセル・デュシャンのレディ・メイド作品(デュシャンが考案した既製品をそのまま使った芸術作品)の代表作である《泉》と題した陶製の小便器は、ダダイムズがもたらした新しい芸術のあり方を代表します(実際にはダダの宣言よりも早くデュシャンは制作していたといわれていますが)。

 

「現代」という時代を真っ先に表現しようとする点や表現されたものをただ鑑賞するだけでは意味を理解することができないという現代アートの特徴は、前衛芸術が誕生した20世紀初頭にうまれました。

 

さて、長い前置きになりましたが、要するに目の前にある現代アートは、一筋縄ではいかないものなのだなあ、と退散しないでほしいのです。「現代アートの特徴は何か」という、この面倒な前提を了解しておくと現代アートの面白さが徐々に見えてきます。

 

かなり高度な知的なゲームであるがゆえに、ルールを覚えるまでは少々我慢が必要ですが、それを理解すればかなり面白いものです。

 

くり返しますが「今を最優先して、『時代』をテーマにしていること」、それに「眼の前のモノとそれが指し示す意味内容には、ある距離、あるいは断絶があり、そこに様々な意味が流れ込んでいるということ」という二つを覚えておくだけで、現代アートへの理解が進みます。そのための〝ちゃぶ台返し〟のゼロベース思考です。

 

時代については、「現代」をテーマにしているということでわかりやすいと思います。

 

もう一つの、ものとそれが指し示す意味の間に乖離があるということについてですが、これも盛んにお話ししてきた、「知覚と認識の誤謬」や「いい作品には幾重にも意味を読み込める多重性がある」といったことともつながっていて、ものとそれが指し示す意味との間には乖離があるということです。

 

通常は見えたものを見慣れた解釈で関連づけますが、それを疑うことで、思いも寄らない意味が生まれてくるということ。そして作品解釈に我々も参加することができるということなのです。

 

この二つを手がかりに作品を読み込んでみてください。

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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