「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。

父親が息子の家賃を払い続けていたワケ

慎之介さんから、哲郎さんに対する不満は溢れるばかりですが、連帯保証人の慎之介さんが立て替え払いをしないとなれば、連帯保証人である慎之介さんも相手に明け渡しの訴訟を申し立てするしかありません。すると慎之介さんは、すがるように助けを求めてきました。

 

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わかりました。お金は払います。だから私を被告にはしないでください。立場がなくなりますから。私は教育者なのです。中学校の校長もしました。今は私立の高校の顧問もしています。被告になんてされてしまえば、立場がありません。

 

強制執行にかかる費用まで、ぜんぶ私が負担します。はい、約束します。だからどうか私を被告にすることだけはやめてください。

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長期間、慎之介さんがお金を払ってきた理由が、これで分かりました。

 

保身を図るために、息子と向き合うことなく、安易にお金を払い続けてきたということなのでしょう。

 

哲郎さんは41歳ですから、もちろん十分すぎるほど大人です。けれどもここまでずっと親がかりで生きてきた人が、今になっていきなり梯子を外されてしまえば、生きていくのは難しいのではないでしょうか。

 

膝を突き合わせて、もっと早くに親子が向き合っていれば、違った結果になったかもしれません。残酷だな……そんな印象すら抱きました。

 

慎之介さんとは支払いを約束した書面を交わし、哲郎さんだけを相手にした明け渡しの訴訟手続きが始まりました。手紙を書いても、電話をしても、そして会いに行っても、哲郎さんとは話し合いはできませんでした。

 

哲郎さんは欠席でしたが、裁判では明け渡しの判決が言い渡され、手続きはいよいよ強制執行へと移ることになりました。

 

執行官が部屋のベルを鳴らしても、中から鍵を開ける様子はありません。でもエアコンのファンが回っているので、哲郎さんは室内にいるようです。

 

「木村哲郎さん、裁判所です。鍵開けますよ」

 

何度か執行官が声をかけた後、外から部屋の鍵が開けられました。すると中からバットを振り回しながら、哲郎さんが飛び出してきたのです。

 

「警察呼んでっ!」

 

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    太田垣 章子

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