税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税金の申告で、税務当局から指摘が入ったとき「おかしい!」「間違ってる!」と思っても反論できない。そのような現状を問題視した弁護士の北村豊氏が執筆した『争えば税務はもっとフェアになる』(中央経済社)より、一部を抜粋・編集して、財産管理メモが有効である理由を説明します。

財産管理メモの作成は、税金対策の第一歩であるワケ

■納税者が用いた武器

 

本件において、納税者が用いた武器は、お父さんが記録していた財産管理メモです。争点は、息子名義の預金口座に入金されたカネは誰のものかでした。

 

税務当局は、息子名義の資産管理会社の株式については、贈与税を課す期限が過ぎてしまっていることから、資産管理会社の株式に姿を変える前のカネを捕まえようとしました。そして、このカネについては、お父さんから息子に贈与されたという事実を確認できないことから、お父さんに返還請求権があるはずだと考えたわけです。

 

しかし、お父さんは、自分名義の財産だけでなく、家族名義や資産管理会社名義にしていた財産も含め、財産の管理に関する記録を克明に残していました。もちろん、その記録の中には、息子に対し返還を請求する権利がある預け金があるといった記載はありませんでした。

 

そこで、審判所は、息子名義の預金口座に入金されたカネの管理状況や、その原資などを検討した結果、そのカネはそもそもお父さんのものであるという結論に達したわけです。このように、お父さんの財産管理メモを武器に、返還請求権は発生さえしていないという事実を決めたことが、本件の勝因といえます。

 

相続税が課される財産は、もともと、亡くなった方のものです。そのため、亡くなった方のものであった財産の範囲を確定させることが必要です。この財産の確定は、実務的にはとても面倒な作業となることが少なくありません。その財産のことを最も良く知っている人が、この世にいないからです。

 

しかも、財産が誰のものかは、名義だけでは決まりません。その取得の原資を出したのは誰か、その財産を取得することを決めて、実際に手続を行ったのは誰か、その管理運用を行っていたのは誰かなどを総合して、その財産が誰のものかが判断されます。

 

それも、最近の財産の管理状況だけでなく、20~30年も前の財産の管理状況が問題となることもあります。そうなると、財産の管理状況の手がかりさえないということが起こります。

 

そんなとき、亡くなった方の財産管理メモが出てくると、財産の確定作業はとてもはかどります。それを手掛かりに、亡くなった方の財産の管理状況を推測できるからです。

 

財産管理メモの作成は、相続税対策の第一歩となることを知っておきましょう。

 

 

北村 豊

DT弁護士法人パートナー

弁護士・税理士・ニューヨーク州弁護士

 

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争えば税務はもっとフェアになる

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北村 豊

中央経済社

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