税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税金の申告で、税務当局から指摘が入ったとき「おかしい!」「間違ってる!」と思っても反論できない。そのような現状を問題視した弁護士の北村豊氏が執筆した『争えば税務はもっとフェアになる』(中央経済社)より、一部を抜粋・編集して、財産管理メモが有効である理由を説明します。

息子名義の預金口座に入金されたカネは誰のものなのか

■審判所が示した判断

 

さて、審判所は、どう判断したでしょうか? まず、財産が誰のものかを決めるにあたっては、もちろん、その名義が重要となります。でも、他人名義で財産の取得をすることも、特に親族間においてはみられることです。

 

そこで、その財産の原資を出したのは誰か、その財産を取得することを決めて、実際に手続を行ったのは誰か、その管理運用を行っていたのは誰かなどを総合して判断すべきとしました。その名義と実際に管理運用している者との関係を検討すべきということです。

 

次に、審判所は、この息子名義の預金口座に入金されたカネが誰のものかを検討しました。お父さんは、昭和59年以降、少なくとも平成7年までの間、自分と息子とお母さんと資産管理会社の名義になっている財産と負債の年ごとの状況について、財産管理メモに記録していました。

 

昭和59年以前から平成17年11月までの間、この預金口座の預金通帳に、入金原資や出金後の使途も記載していました。預金口座の預金通帳と届出印も、少なくとも、平成2年から平成18年までの間は、お父さんの自宅の金庫に保管され、預金通帳の記帳や入出金の記載もお父さんが行っていました。

 

したがって、平成18年に預金口座の預金通帳と届出印を息子が管理するようになるまでは、預金口座に入金されたカネについて、お父さんが管理運用していたものといえます。また、多額の財産を有していたお父さん以外に、5000万円ものカネを用意した人はいないことから、カネの原資はお父さんのものであったとみるのが自然です。

 

そうすると、このカネはお父さんのものであり、息子名義の資産管理会社の株式も、このカネが姿を変えたものであるから、お父さんのものであったと審判所は判断しました。

 

もっとも、平成18年以降は預金通帳と届出印を息子が自身で管理するようになりました。また、息子は、少なくとも平成21年分以降は、所得税が課される所得に、資産管理会社の株式の配当金を加えて申告してきています。そのため、審判所は、平成18年頃に、資産管理会社の株式はお父さんから贈与により息子に移転したものと判断しました。

 

そうすると、お父さんがこのカネの返還を請求する権利は、存在はおろか発生していたとすらいえないということになってしまいます。そこで、審判所は、相続税を増やす処分を取り消して、納税者に軍配を上げました。

 

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争えば税務はもっとフェアになる

争えば税務はもっとフェアになる

北村 豊

中央経済社

「おかしいぞ!」「間違っとる!」 税務当局の指摘に納得がいかない納税者から、毎日、怒りのご相談が寄せられます。 その原因のほとんどは、事実の違いです。納税者に関する事実と、税務当局が把握した事実との違いが、怒り…

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