農地の相続時には、所得税や相続税等の申告が一般的な相続と同様に必須となります。加えて農地の名義変更など、踏むべき手順は多岐に渡り注意が必要です。ここでは、農地の相続で発生する税金の概要のほか、相続税の申告について税理士の奥田周年氏が解説します。※本記事は、『図解と事例でよくわかる 都市型農家の生産緑地対応と相続対策』(ビジネス教育出版社)より抜粋・再編集したものです。

相続税の申告は「相続開始日から10ヵ月以内」に

相続税は、相続又は遺贈で財産を取得した方が、相続開始の日から10ヵ月以内に、被相続人の住所地の税務署長に申告し、相続税の申告書の提出期限までに、納税しなければなりません。

 

相続税は、まず、下記のステップで相続税の課税対象を計算します。

次に、下記のステップで納税額を計算します。

 

(1)被相続人の財産の確定と評価 

 

相続税の課税対象となる財産には、「本来の財産」と「みなし相続財産」の2種類があり、まず、被相続人の財産の棚卸しを行い、次に財産の評価により数値におきかえていきます。

 

①被相続人の財産の確定

 

ア)本来の財産

 

本来の財産とは、民法上の財産をいい、土地、家屋、現金、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権、貴金属、書画、骨董等をいいます。

 

なお、お墓、仏壇、位牌など祭祀に関する財産は、相続税の非課税財産となりますので、課税対象外となります。

 

被相続人がご自身の財産の所在を相続人に伝えていればわかりやすいですが、そうではない場合、被相続人の財産の把握は難しくなります。

 

パソコン上で取引をしているケース(パスワードが不明で)、家族に話していないケースは、特に困難です。

 

また、ご自身の個人情報を大切な方へ伝える仕組みとして、「情報の貸金庫サービス」というアプリがあり、高齢者の方々の個人情報を保管し、大切な方と情報を共有できる取組みが進められています。

 

この「情報の貸金庫サービス」を活用できると、ご自身の相続人や関係者は、財産の所在を確実に伝えることも可能になります。

 

被相続人の財産の把握には、郵便物が財産の発見のポイントになりますので、届いた郵便物は、相続手続が終わるまで、保管しておくことをおすすめします。

 

 

イ)みなし相続財産

 

みなし相続財産とは、本来は被相続人の財産ではありませんが、相続税を計算する上で、相続財産とみなすものをいい、相続をきっかけとして受け取る財産をいいます。

 

主なみなし相続財産として、被相続人が保険料を負担していた「死亡保険金」や「死亡退職金」があります。

 

それぞれ、相続税が非課税となる枠があり、「500万円×法定相続人の数」までは相続税の対象となりません。たとえば、死亡保険金が2,000万円で、法定相続人が配偶者と長男、長女の合計3人の場合、2,000万円から1,500万円を差し引いた500万円に対し相続税がかかります。

 

②財産の評価

 

ア)土地の評価

 

土地の評価は、「路線価」が設定されている地域と「倍率地域」として設定されている地域に区分され、計算方法が異なります。

 

「路線価」とは、道路沿いの整形な宅地の価格で、1㎡あたりの評価額が千円単位で表示されています。

 

路線価地域では、評価対象地が整形地と比較して地形の劣る場合は、路線価に各種補正率を適用して修正した単価に地積を乗じて計算します。

 

倍率地域では、固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します。

 

イ)家屋の評価

 

家屋は、「固定資産税評価額」を基礎として評価します。

 

ウ)預貯金、有価証券など

 

預貯金、有価証券などは、原則として相続開始日現在の時価で評価します。

 

(2)贈与財産の確認 

 

相続や遺贈で相続財産を取得した方が、「相続開始前3年以内」に被相続人から贈与を受けていた場合は、その贈与財産を相続財産に加算しなければなりません。

 

この贈与財産には、毎年の贈与税の非課税枠である110万円以下のものも含まれます。

 

なお、「住宅取得資金の贈与の特例」や「贈与税の配偶者控除」を適用した贈与財産は対象外です。

 

また、「相続時精算課税制度」を適用した贈与財産は、「相続開始前3年以内」かどうかを問わず、常に相続財産に加算しなければなりません。

 

 

(3)債務・葬式費用の確定 

 

相続税の課税対象財産から差し引くことができるマイナス財産には、「借入金」、「保証」、「未払金」、「葬式費用」の4つがあります。

 

①借入金

 

被相続人の相続開始日現在の借入金、ローンが相続の対象となり、相続財産を放棄しない場合は、借入金などの返済義務も負うことになります。

 

②保証

 

被相続人が、会社や友人などの保証人になっている場合は、その義務も相続の対象となります。

 

相続税の計算の上では、相続開始日で既に保証人として支払わざるをえない状況にあり、かつ、主たる債務者に請求しても弁済の見込みのないときは、債務と同様の取扱いとすることができます。

 

③未払金

 

相続開始日現在で未払いの固定資産税や所得税などの税金、医療費、入院費などは、相続人に支払い義務があります。

 

④葬式費用

 

葬式費用は、被相続人の債務ではありませんが、相続税の計算上では、債務と同様に、被相続人の財産から差し引くことができます。

 

葬式費用として差し引くことのできるものは、通夜、葬式前後にかかる諸費用としてお寺や葬儀社への支払い、埋葬費、火葬費などです。

 

49日など法事や香典返しは、葬式費用の対象外となります。

 

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