2025年には、日本企業全体の1/3にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。会社を引き継ぐ人が見つからない場合、選択肢の一つとして考えられるのが「M&A(合併と買収)」です。今回は、「M&Aの価格」の決まり方について、株式会社WealthLead(ウェルスリード)代表取締役シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が解説します。

最終的なM&A価格は「シナジー効果」を加味して決定

代表的な計算方法を見てきましたが、いずれの方法であっても一点の価格だけが示されることはなく、一定の幅を持って提示されます。たとえば、1億円~2億5,000万円のような形です。また、複数の方法で計算し、それぞれの算定結果が示されるのが一般的ですので、さらに価格の幅は広くなります。

 

これがM&Aには「適正価格」や「理論価格」はないと冒頭でお伝えした所以ですし、バリュエーションはあくまでおおまかな目安にしかなりません。

 

それでは、M&Aの価格は最終的にどのようにして決まるのでしょうか?

 

売り手企業オーナーにとって、M&Aの「正しい価格」は「できるだけ高い価格」です。今まで大事に育ててきた会社ですし、少しでも高く売りたいのが人情です。一方、買い手企業にとってみれば少しでも安く買いたいところです。

 

通常、売り手企業は複数の買い手候補企業と交渉をします。買い手企業は、他社よりも安い価格を提示すれば当然買収はできなくなりますし、あまりに高く買ってしまうと高値掴みとなり、買収失敗となりかねません。したがって、買い手企業は他社の提示価格も意識しつつ、買収しても十分なメリットがある価格を見出す必要があるのです。

 

そこで、買い手企業は、対象会社の単独の価値に自社が買収した場合の「シナジー効果」をプラスして買収価格を見積もります(図2)。

 

【図2】シナジー効果のイメージ図

 

シナジー効果には、大きく分けて次の5つあります。

 

1. 収益シナジー

2. コストシナジー

3. 財務シナジー

4. 信用力シナジー

5. 負のシナジー

 

さらに、シナジーは次の3つの視点から検討します。

 

A) 「買い手企業の経営資源を対象会社に適用する」ことで対象会社に生まれるシナジー

B) 「対象会社の経営資源を買い手企業が活用する」ことで買い手企業に生まれるシナジー

C) 「双方の経営資源を融合する」ことで生まれる今までなかったシナジー

 

M&Aは、売り手が同じ企業であっても、買い手企業がシナジー効果をどのように見積もるかによって提示する買収価格はそれぞれ違うことになります。

 

突き詰めて言うと、「M&Aの価格は買い手が決める」のです。

 

では、売り手企業オーナーには価格についての主導権はないのでしょうか?

 

M&Aの価格は買い手が提示しますが、それを「受けるかどうかは売り手が決める」のです。

 

M&Aで最も重要な要素である「価格」ですが、「適正価格」も「理論価格」もない、あるのは「希望価格」と「目安価格」、それに「M&Aが成立した価格」であり、その価格はどのように決まるか、理解できましたか?

 

いずれ事業や会社を売却することが選択肢にあるのであれば、事業を磨き、「価値を上げる」ことに注力しましょう。

 

成長戦略としてM&Aを活用するのであれば、どんな事業・会社と組めばどのようなシナジー効果があるのか、日頃からイメージしておくことが大切です。

 

濵島成士郎

株式会社WealthLead

 

 

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