得意分野を徹底的に磨くことで、苦手分野も伸びてくる
有元:コペルプラスでは、幼児教室の経験を活かして発達支援を行っています。
発達支援は、成長に凸凹があったり、苦手なことのあるお子さんが対象なので、苦手をなくす方向の教育がまだまだ主流です。
幼児期に様々な刺激を受けることを大事にしてきたので、年齢や発達の段階で必要なことを網羅するかたちで届けることを大事にしています。
瀧:なるほど、非常に興味深いです。今まではできる科目はもうやらなくていいから、できない科目をやった方がいいという考え方だったのですが、今はむしろ、できる方をもっと頑張って誰にも負けないくらい伸ばした方が、自己実現にはいいのではないかという考え方もあります。
そうすると何がいいかというと、ある能力が伸びると他の能力も伸びる「汎化(はんか)」という性質がはたらきます。得意なものを徹底的に磨くことで、なぜか苦手なものも伸びてくるんです。
有元:実際に先生方からも、プログラムとしていろいろな課題をこなしていくなかで、気づいたらいろいろな部分が伸びていたという声をいただいています。
瀧:それはおそらく、受ける子どもたちにとっても非常にプラスで、苦手なことをやりなさいと言われるよりも、いろんなことをやってそのなかから好きなものが見つかる、好きになってどんどんやっていく方が汎化がどんどんついてくる。
だから、苦手なものに特化するよりも、凸凹をもっと凸凹にする方が、実は凸凹が治っていたという逆説的なことが、脳科学的には十分起こると考えられます。
有元:幼児期の発達は引っ張られるように伸びるとよく言われますね。
瀧:まさにそうでしょうね。
有元:苦手をなくすことに一生懸命になりがちなのは、大人が安心感を得るためかなと思います。苦手なことがある姿に不安を覚え、それがなくなることに安心するというのはあると思います。
瀧:親のエゴとして、どうしてもそう思いますよね。
有元:幼児期はいろんな刺激を受けて、今できることがゴールではなく、きっとその先につながっていくという気持ちで、発達支援の施設のなかでもコペルプラスの目指す教育を届けていきたいなと思います。
「発達支援が必要な子」に様々な刺激を与えるメリット
瀧:発達支援の必要な子どもたちは、興味関心の偏りが普通の子よりも強いだけだと思うんです。いろんな刺激を与えてあげると、必ず響くものが見つかり、それに対して自信を持つ、楽しくなる、結果的にいろんな能力が伸びることにつながっていきます。
有元:苦手なところがなくなった姿を見たいという大人の思いも、否定することなく、いろんな刺激を楽しく届けることに意味があるということを届けていきたいです。
瀧:苦手なことも楽しくやりながら、好きなことをもっと楽しくやれれば理想ですよね。
凸凹のある子どもたちも十分自己実現する、むしろ我々よりも特定の能力は飛び抜けて高いことが多いので、そこにうまくはまっていくとすごい能力を発揮すると思います。
「成功体験が重要」だといえるワケ
有元:得意なことを伸ばすって、どこまでも際限がないことなのでしょうか。
瀧:私はそう思います。何がいいかというと、「物事の成し遂げ方がわかる」ことなんです。特定の趣味で成功したとしても、運動にも当てはまるし、仕事にも勉強にもいろんなことに当てはまります。
運動も勉強も芸術も、上達の仕方は似ているのだと思います。共通項があるんですよね。
有元:やり方の共通項ですね。
瀧:そうなんです。特定の能力に特化していたとしたら、それをどんどんやらせてあげるといろんなことのやり方が身につくのではないかと思います。
有元:「成功体験」みたいなものかなと感じました。「ちょっとできたね。」ではなくて、「すごくできたね。」というところまで取り組む内容をアレンジした方がいいわけですね。
瀧:それは理想ですね。やっぱり自信は大事ですから。まさに「成功体験」ですね。
有元:はい。ありがとうございました。
対談動画「発達支援で必要な様々な刺激」はこちら!
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瀧 靖之
1970年生まれ。医師。医学博士。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター教授。東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。16万人の脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍している。著書『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』は、10万部を突破するベストセラーとなっている。
有元 真紀
発達支援スクール コペルプラス代表講師。幼児教室コペルの講師時代から、のべ1万人の子どもたちの指導に携わる。また近年は指導員の育成にも力を入れている。