近未来の消費者洞察データを基軸にイノベーション支援を展開する、株式会社SEEDATA代表取締役社長の宮井弘之氏は、未来を予測せずに、目の前の現象に手持ちの資源や既存の手段だけでその都度、臨機応変に対処していく「エフェクチュエーション」という考え方を説いています。

福沢諭吉とウォーレン・バフェットから学ぶ「決断力」

マルコフ連鎖の系列は、物理学の統計力学の分野によく現れるもので、一般的な社会現象にも展開できると考えられています。

 

例えば新型コロナウイルスの流行は、過去のデータからはまったく予測できず、発生にいち早く気づいたのは、中国・武漢で最前線の医療現場にいる医師でした。その医師の報告も、中央当局にはなかなか信用されずに握りつぶされそうになったのはよく知られています。

 

人間は、過去の成功体験などにとらわれがちですが、現在の世界の変化は、必ずしも過去のデータが有用な場合ばかりとは限りません。

 

日本も幕末に大きな社会の変化がありましたが、そこで活躍できたのは、過去のしがらみにとらわれない下級武士が多く、中央政府(幕府)に所属していた旗本や、各藩のお殿様の多くは、過去の体制や習慣にとらわれて、時代の変化に対応しそこないました。

 

幕末の成功者として象徴的なのが、福沢諭吉です。下級武士の出身である福沢諭吉は蘭学と漢学を学んでいましたが、外国人居留地である横浜でまったくオランダ語が通じないことを知り、せっかく修めたオランダ語から英語の勉強に乗りかえます※4。優れてエフェクチュエーション的な考え方をもっていました。

※4 福沢諭吉 著、富田正文 校注『福翁自伝』慶應義塾大学出版会

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

現代の人物でいえば、アメリカのバークシャー・ハサウェイのCEOで投資家のウォーレン・バフェット氏が過去の成功体験にとらわれず、時代や環境の変化に合わせて臨機応変に重大な決断ができる方です。

 

バフェット氏は、新型コロナウイルスの流行を見て、何十年も保有していた航空会社の株を売って巨額の損失を計上しましたが、90歳を超えてその判断ができる胆力は尊敬に値します。

 

コーゼーション的には理解しがたいものですが、エフェクチュエーション的には、結果はどうあれ、正しい判断だったのだと思います。皆さんは過去のしがらみにとらわれず、エフェクチュエーション的な思考ができるでしょうか。

 

 

宮井 弘之

株式会社SEEDATA 代表取締役社長

 

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