かつて、高度成長を生み出した「旧日本式経営」はバブル期の崩壊とともに瓦解し、日本企業は欧米の「新自由主義」に飲み込まれました。その過程を見ていきましょう。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だった時代も…

戦後アメリカは自国にない「源泉制度」に反対したというが、当時の大蔵省は頑として受け入れずにこれを採用した。その結果サラリーマンはなけなしの給料から本人が意識しないうちに納税させられる。

 

「鶏小屋」と揶揄された小さな住宅を手にした庶民は、否応なく住宅ローンを毎月銀行に納める。この「人口構造」と「一極集中政策」、そして企業の「日本式経営」があったがゆえに、この国は戦後の奇跡の復興を果たし、人類史に残る高度経済成長を記録する。

 

70年代末期にはアメリカの学者から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の称号を頂き、国土約25倍のアメリカ本土と日本列島の地価総額はほぼ等価と言われたものだ。

 

ところが90年を境にバブル崩壊でこの方程式が瓦解する。次に生まれたのは、欧米の強大な資本を背景とする「新自由主義」であり、「会社は株主のもの」という新たな図式だった。

 

日本がバブルに沸いた80年代、経済的にどん底だったアメリカはITやデジタル技術に若い叡知を集め、次の時代への布石を打つ。95年のウィンドウズショックを境に情報技術が経済界の「寵児」となり、同時期に軍事技術として生まれた「インターネット」が新たな社会インフラとなって全産業界を飲み尽くした。

 

GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)に象徴される新興企業が次々と世界を制覇し、その創業者や株主は超資産家となって世界経済を牛耳る。経済格差はますます広がり、「自由経済」「経済民営化」を前提とする「新自由主義」が世界の主流となる。

 

今や企業は株主のものであり、株主は企業を成長させ、あるいは有望なベンチャーに投資して「市場で高値で売却」して暴利をむさぼる。そこでは社員の生活も雇用も軽視される。あるのは株主の「欲望」だけだ。

 

行き過ぎた資本主義は地球環境を決定的に悪化させ(地球温暖化、資源の枯渇、原発による放射能汚染、感染症の蔓延等)、経済格差を絶望的に広げ、先進国の富のための負の遺産(例えば排出されるCO2や過酷な労働)を貧困国が背負うという図式を作る。

 

だからといってグローバル化した世界経済において、企業経営は古き日本式には戻れない。かつてのような「日本式家族経営」に郷愁(きょうしゅう)は感じても、そのスタイルを採った瞬間にその企業は市場から淘汰されるのだ。

 

 

神山 典士

ノンフィクション作家

 

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社員の幸せを創る経営

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神山 典士、伊奈 紀道

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