離婚はスムーズに進むものばかりではなく、トラブルに発展してしまうことが多いもの。万が一に備えて、日頃から知識を仕入れておくことが重要です。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、子どもがいる夫婦の別居について解説していきます。

配偶者への相談なしで「子連れ別居」は問題ないのか?

『離婚や別居の二文字が頭をよぎったとき、「今すぐ、家を出たい!」と思い、子どもも一緒に連れ出ても問題ないのでしょうか』

 

ご相談を受けていて、このような質問をされることがありますが、実はなかなか難しい問題です。

 

特に、海外では子どもを連れて出ていくこと=子どもの「連れ去り」になるケースがほとんどですので、国際的なルールの間では摩擦が生じてしまいます。

 

日本では「子どもの連れ去り」が後を絶たない(画像はイメージです/PIXTA)
日本では「子どもの連れ去り」が後を絶たない(画像はイメージです/PIXTA)

離婚後どちらかの親が単独で親権、監護権を得るが…

今の日本では、離婚後どちらかの親が「単独親権」「単独監護権」を得ることになります。

 

結婚・同居中の共同監護の状態から、一方の親が子を連れて出ることが「連れ去り」として、法的に問題になるわけではありません。ですから、両方が親権を望んでいる場合、同意なく子どもを連れて出るケースが後を絶たないのです。

 

しかし、父か母がすでに単独で子どもを監護するようになった状態で、他方がこれを突然取り返す行為(例えば保育園や幼稚園から連れ去る、下校時に車に乗せるなど)は、「誘拐」とされてしまうことがあります。ここが大きな問題が生じてしまう所以なのです。

 

別居に踏み切るのは自由ですが、あまりにも正当な理由がないまま別居した場合、助け合って同居する義務を放棄した「悪意の遺棄」と責められてしまう可能性もあります。
(ですので、もし別居をお考えの際には「置き手紙」をして、自分には別居を選んだ理由を端的に書いて示しておくことが得策です。)

配偶者が子どもを連れ去ってしまったらどうすべき?

現在の日本の家事法制では、これを法的にストップすることは容易ではありません。

 

ひとたび妻が子を連れて出てしまったら、「監護者の指定」「子の引き渡し」の請求を、家庭裁判所に申し立てることはできますが、この請求を認めてもらうのは難しいのが実状。

 

連れ去った相手が「監護に不適切である」ことを立証しなければならないのです。

 

また、子どもの親権者は「子どもの利益が最優先」ですが、同時に、「現状維持の原則」があり、「子どもが現在落ち着いて生活できているなら、その状況を尊重すべき」という考え方も影響するからです。

 

よって、子を連れて別居されてしまったら、多くの場合、子に相当回数の面会を求めることしかなす術がなくなることも大いにあります。

 

共同監護を法的な建前としない法制度の是非はありますが、まずは、十分な話し合いを重ね、相手が子を連れ出ることを防ぐことが、最重要課題というほかありません。

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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