(※写真はイメージです/PIXTA)

相続で揉める原因にはパターンがあり、事前に把握して早めの対策をすることが大切です。今回は、相続トラブルが起きやすい5つのパターンと解決策について見ていきます。※本連載は、海老原佐江子氏の著書『家族に迷惑をかけたくないあなたが認知症になる前に準備しておきたいこと』(WAVE出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続トラブルに備えるには「早めの対策」が必要

相続の準備を始めようと思ったら、まず次のことから取りかかりましょう。

 

①財産目録をつくる

自分が所有している財産を整理して一覧表をつくります。これが「財産目録」です。不動産、預貯金、株式、有価証券、また通帳がないネット銀行やネット証券も忘れずに記入します。財産目録をつくることで、これからの生活を考えるきっかけにもなり、突然、自分に死が訪れたとしても、遺族が財産を調べる手間が省けます。

 

受取人が指定されている保険は相続財産には含まれませんが、受取人が確実に保険金を受け取ることができるように、これも目録に記載します。負債がある人は、それについても目録に記載しておきます。年金やクレジットカードの情報も書いておくと、遺族が死亡後の手続きをするときに役立ちます。財産目録の書式に決まりはないので、市販のエンディングノートを利用してもいいでしょう。

 

また、財産目録を作成するときには、しばらく使っていない金融機関の預貯金口座やクレジットカードを解約し、整理しておきます。相続人が金融機関口座の解約手続きをするには、書類を複数回にわたり提出したり、戸籍謄本など多くの資料を提出したりするなど、とても煩雑だからです。自分が元気でいる間にこれらを解約しておけば、遺族の手間をかなり省けます。

 

②戸籍謄本等を取っておく

次に、自分が生まれてから現在までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本(以下「戸籍謄本等」と呼びます)を取得します。

 

相続の手続きの際は、金融機関でも、法務局でも、どの機関でもこれらの戸籍謄本等の提出を求められます。あらかじめ自分で戸籍謄本等をそろえておけば、遺族の手間を大きく省くことができます。

 

戸籍について、少し説明しておきます。

 

日本では、生まれたときは親の戸籍に入ります。しかし、結婚すると親の戸籍を出て新しい戸籍をつくります。法律の改正によって新しく戸籍が編纂されることもあります。引っ越して本籍地を変えてきた場合は、前の本籍地での戸籍謄本を取る必要があり、その通数が多くなります。

 

戸籍謄本は、本籍地がある役所(市区町村役場)に請求します。郵送で請求することもできます。まず、現在の戸籍謄本を取るところからスタートです。戸籍謄本には、必ず一つ前の戸籍の所在地が記載されているので、順番に一つずつ遡って途切れることのないように取っていきます。

 

戸籍謄本等の請求にあたり、取得の目的が「相続のため」生まれてからの戸籍がすべて必要であることを請求書に明記すると、役所の職員が配慮して相続手続きに必要なものを交付してくれることもあります。

 

子どものいない人は少し注意が必要です。そういう人は、親、祖父母、曾祖父母などの戸籍謄本等を取得して、直系尊属がすでに全員死亡していることの確認を求められることがあります。多くの場合、明治時代の戸籍まで遡ることになり、労を要する作業です。

 

兄弟姉妹が相続人になる場合で、兄弟姉妹に亡くなっている人がいる場合、兄弟姉妹が亡くなるまでの連続した戸籍謄本等も必要です。

 

このようにして、子どもがいない人は何十通もの戸籍謄本等を取得しなければならないことがあります。これはかなり時間がかかる面倒な作業です。祖先の戸籍謄本等までは自分でそろえておくといいでしょう。

 

実際に相続が始まったあとは、これらの収集した戸籍謄本等に加え、本人が死亡したことがわかる戸籍謄本か除籍謄本と、相続人全員の最新の戸籍謄本を取ることで、相続人が相続手続きを行うことができます。

 

③身のまわりの整理をしておく

多くの人が「なんとかしなければならない」と真剣に思っているのが、身のまわりのものの整理です。最近は、40代くらいから生前整理を決意する人もいるようです。身のまわりのものの整理はけっこう体力がいる作業です。ぜひ、気力も体力も十分あるうちに整理を進めてください。

 

気を付けたいのは、貴金属、宝石、骨とう品、美術品、絵画、ブランド品などの「動産」の整理です。資産価値のある動産は相続財産に含まれますが、素人である相続人には価値の判断が難しく、捨てるに捨てられずに困ってしまったり、反対に価値のあるものと知らずに処分してしまったりすることがあります。自分で整理して価値があるものを区別しておきましょう。

 

資産価値があるというほどではないけれども、ちょっとしたいいものであれば、誰かにプレゼントしてしまうのもいいでしょう。ただし、昔の指輪やペンダントのように、譲られても困るものもあるので、自分で売却したり、思い切って捨てたりするのもいいと思います。このような思い切りも、元気でしっかりしているうちでないとできなくなるかもしれません。

 

海老原 佐江子

城南かがやき法律事務所 弁護士

 

 

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