不動産の相続は、分割の方法などを巡って相続人間での争いが起こりがちです。しかし、その不動産が「賃貸物件」だった場合、大変さは倍増します。協議が紛糾している間にも、該当の物件からは家賃が発生し、また、修繕の必要が生じれば、都度迅速に対応しなければなりません。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

遺産分割と遺産分割協議中の家賃&修繕費は「別問題」

遺産分割協議中の家賃や修繕費の問題は、遺産分割協議の「相続財産をどう分けるか」という手続きと、完全に別の理屈で考える必要があります。

 

しかし、賃料の処理については、最高裁判例によって明確な回答が出ています。それは、「法定相続分に応じて分割取得する」というものです。

 

たとえば、月額100万円の賃料が発生するマンションがあり、相続人が子ども2人の場合は「2分の1ずつの相続分だから、各自50万円を受け取ってください」というのが法律上の結論となります。

 

一方で、賃料を発生させるマンションそのものは、遺産分割手続きが終了するまで共有状態となり、2分の1ずつ権利を持っていることになります。

相続人同士のエスカレートする疑心暗鬼に、病みそう…

上記のマンションとは別のケースです。

 

複数の相続人で共有状態となっている実家の裏庭にある腐って倒壊しそうな大木について、相続人のひとりから、勝手に処分していいか聞かれたことがあります。木が大きいため業者への依頼が必要ですが、その支払いを相続財産から出したいと考えているといいます。

 

危険を排し、物件の価値を維持するための行為ですから、その方が実行しようとしていることは「保存行為」という枠組みとなり、理屈上は、持ち分を持っている方や、相続人のいずれかであれば、単独で処理することができます。

 

しかし、遺産分割で揉めて相続人同士がいがみ合っている状態だと、「本当に木の処分をすることが妥当だったのか」「必要ないのに知人の業者に頼み、キックバックを貰っているのではないか」など、そこまで疑われることもあるのです。

 

そのため、実際に建物の価値を保存する行為であっても、依頼した業者の見積もりが不当に高額で相場から逸脱した価格になっていないか、相見積もりを取るなどして証拠を残しておく必要があります。

 

さらに「倒壊しそうかどうか」という状況も写真に残しておくなどの対処をしなければ、紛争は未然に防げません。

 

相続問題は、一度揉めはじめると次々に不満が噴出することになります。金額の大きさは関係ありません。

 

親族同士「この子は昔からこうだった!」などと過去の話を掘り起こし、得するためにウラをかこうとしているのでは等々、どんどん疑心暗鬼になってしまうのです。

 

そのことからも、揉めごとの種は、とにかくひとつずつ減らしていく必要があるのです。


 

山村 暢彦
山村法律事務所 代表弁護士

不動産法務、相続税の税務調査…
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