働くお母さんたちの「保育園問題」…待機児童数減少で「悲痛の叫び」から「格差」にシフト?

働くお母さんたちの「保育園問題」…待機児童数減少で「悲痛の叫び」から「格差」にシフト?

女性の活躍が推進されている時代でありながら、多くの女性が出産や育児をきっかけに働くことを諦めている今の日本。その理由として、保育園を巡る問題が挙げられます。今回は、ベビーシッター事業、保育園事業、病院内保育園委託事業、企業主導型保育園のFC事業、人材育成・派遣・紹介事業などを展開する株式会社マザーグース代表取締役の柴崎方恵氏が、現代日本を取り巻く「保育環境」について解説していきます。

待機児童数減少で「保育園の質」の格差が浮き彫りに

近年の待機児童数の状況を見てみると、2020年には全国で1万2439人となりました。厚生労働省によれば、待機児童数の調査を開始して以来、過去最少の人数です。

 

待機児童数が減ってくるにしたがって、「預ける先が見つからない」という声にも変化
が起きています。

 

これまでは、預けたい人の数に比べて、保育園の数が圧倒的に少ないために、預けられる先がどこにもないという悲痛な叫びでした。しかし、最近では保育園の質の問題に重心が移ってきているのではないかというのが、保育の現場の肌感覚です。

 

もちろん、働くためには子どもを保育園に預けられるかどうかが第一関門となりますがお母さんたちの本音としては、「ただ預けられればよい」というわけではありません。大
切なわが子なのですから「“安心して”任せられる保育園に預けたい」と考えるのは当然
でしょう。そうすると、無闇に受け皿の「数」だけを増やしても、“今の”待機児童問題
は解決しません。

 

お母さんたちが保育園を選ぶときに「安心」のための一つの指標とするのが、「認可」
という公のお墨付きです。国の決めた基準を満たしているということは、ひとまず安心の
材料になります。そのため、認可保育園に入れようと妊娠中から見学に行ったり、少しで
も「保育の必要性」の判定基準になる点数を稼ごうと、保活に励んだりするのです。

子どもの預け先の選択肢は「認可保育園」だけじゃない

お母さんたちの「預けられない」という声は、「“認可保育園に”預けられない」、さら
には「“希望している保育園に”預けられない」という意味合いであることが多くなって
きています。

 

しかし、視野を広げてみると、子どもを安心して預けられる先として、選択肢は認可保
育園だけではありません。

 

一つ目の選択肢は、認可外保育園に預けるということです。過去に認可外保育園での事故がセンセーショナルに報道されたのを目にしたことで、「認可外は危険」という印象をおもちの方もいると思いますが、実際は必ずしもそうとは限りません。

 

「認可外は危険」とは限らない(画像はイメージです/PIXTA)
「認可外は危険」とは限らない(画像はイメージです/PIXTA)

 

むしろ、認可外だからこそ、制限を受けることなく、先進的な保育を展開している保育園もたくさんあります。最近では、英語などの語学教育やリトミック(音楽で楽しく遊びながら子どもたちのもつ能力を引きだしていく教育)、体操などに力を入れて、独自の特色を出している認可外保育園も見られます。

 

また、認可外保育園であれば保育料が年収の多寡によって変動しない場合がほとんどのため、世帯収入の多いご家庭の場合、認可保育園より保育料を安く抑えられることもあります。

ベビーシッターは費用がかさむイメージがあるが…

選択肢は保育園だけではありません。ベビーシッターを利用するという手もあります。著者が茅ケ崎市でベビーシッター請負事業を始めた1994年頃に比べて、ベビーシッターを利用するお母さんはずいぶんと増えています。

 

実際に利用している方は、曜日や時間帯を決めて預けたり、用事があるときに必要に応じて頼んだりと、困ったときに頼れる存在として、柔軟に活用されています。

 

特に、0~3歳は母親の愛情をいちばん必要とする時期です。そのため、ベビーシッターさんに預けて一対一で見てもらうというのは、この時期の子どもの預け方として、最適の方法なのではないかと個人的には考えています。

 

日本でも、大家族で暮らしていた時代には、お母さんが働いている間、祖父母などの身内や年上のきょうだいが面倒を見るというのは、よくある光景でした。それを、今はベビーシッターさんが代わりに行うというイメージです。

 

ベビーシッターというと、費用がかさむという印象をおもちの方もいるかもしれませんが、内閣府のベビーシッター派遣事業を利用すれば、1回あたり2200円の割引が受けられます。また、自治体独自の助成制度がある地域もあります。それ以外にも、民間の福利厚生サービス会社による割引制度が利用できる場合もあります。そういった制度を使えば、家計からの出費を抑えながら利用することができます。

 

また、安全面という観点においては、全国保育サービス協会の「認定ベビーシッター」という資格を取得しているベビーシッターなら、きちんと研修を受けて、乳幼児を保育するうえでの必要な知識を身につけているので、安心して預けることができます。

 

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出産・育児による離職ゼロを実現!企業がつくる保育園

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柴崎 方恵

幻冬舎メディアコンサルティング

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