多くの人が誤解しがちだが…「私の方が働いているのに有休少ない!」という主張が、意外にも「見当違い」なワケ

多くの人が誤解しがちだが…「私の方が働いているのに有休少ない!」という主張が、意外にも「見当違い」なワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

企業による保育園ビジネス参入には、事業多角化による経営安定や子育て世代の女性従業員の定着など、数多くのメリットがあります。保育園の主役は当然ながら「子どもたち」ですが、保護者が安心してわが子を預けられる施設になるには、安定的な運営ができていることが大前提です。そのためには、経営者として現場スタッフの管理に最大限注意を払う必要があります。特にスタッフの「有給休暇」については、思わぬ誤認でトラブルになることも。

保育業界が抱える「有給休暇の問題」への対応策

保育士の職場に対する不満の一つに「有給休暇が取れない」があります。それどころか、いまだに「ウチはパートには有給休暇がない」と話す経営者がいるのです。

 

厚生労働省の労働基準行政全般に関するQ&Aによると、年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇と記載してあります。

 

言い換えれば、年次有給休暇とは働きながら取得する休暇であり、退職時にまとめて取得する「有給消化」は邪道だと思います。

 

そのため、筆者たちの会社は年次有給休暇をしっかりと取得してもらうことが重要だと思っています。

 

しかし、取得できる職場には新たな問題も発生するのです。

 

例えば、1日8時間で週2日働くAさんと、1日4時間で週3日働くBさんがいるとします。Aさんは週16時間、Bさんは週12時間ですから、当然、Aさんのほうが、給料が多いし、働いていることになりますが、年次有給休暇はAさんよりもBさんのほうが多いのです。

 

なぜならば、年次有給休暇は働いている日数で付与日が決まるからです。1時間でも働けば1日です。逆にその10倍の10時間働こうが1日なのです。

 

一見、不公平なようにも見えますが、例えば、午前中にお子さんの授業参観などで年次有給休暇を取得した場合、Aさんは8時間分の収入がもらえますが、Bさんは4時間分の収入しかもらえません。

 

こうした法律上のルールを知らないと、給料が多いAさんは「私の方が働いているのに有給休暇が少ないのはおかしい」と不満に思うことがあります。こうした不満の声は、園長や経営者の耳に入る前に、正社員に相談されることがあります。そのとき、正社員も年次有給休暇の制度をよく知らないと「本当だ。おかしいね。園長に言ってみたら」と返答してしまうかもしれません。

 

このときに正社員が「それはね…」と年次有給休暇の説明をしてくれると納得してくれますが、いったん、ほかの人が同調してしまうと、自分を正当化してしまうのが人間です。あとで会社から「法律ではこのようになっているから」と説明をしても、感情的になっていますので完全に納得はできないのです。

「年次有給休暇」に取得理由は不要だが…

また、年次有給休暇の取得ルールについても説明が必要です。年次有給休暇は労働者の権利ですが、職場で権利を振りかざす方はトラブルの元です。ネットで「好きなアイドルのコンサートに行きたいから会社を休みたい」という相談に対して「仮病を使ったら」という回答を見かけますが、そもそも、年次有給休暇に取得理由など不要です。

 

筆者たちの会社では、むしろ、「セルフプロデュース休暇」という自分のモチベーションを上げるために年次有給休暇とは別に特別有給休暇を付与しているくらいです。

 

一方で、なんでもかんでもよいというわけではありません。特に保育園は人員配置基準があります。こうした事態のために会社には「時季変更権」があります。

 

時季変更権は、労働基準法に「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、ほかの時季にこれを与えることができる」とあります。

 

この法律をきちんと説明し、休む場合は、事前に相談してほしいことを伝えます。これも、従業員側から申し出を受けたあとに説明して申請を拒否すると、理屈で言い含められたと思ってしまうので、事前に説明していくことがポイントです。

 

実際は、時季変更権を行使したことは、起業して16年間で一度もなく、皆さん、希望日に取得されています。大切なのは、ルールに基づいてお互いを尊重して働くことです。

 

 

河村 憲良

株式会社Five Boxes 代表取締役

 

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