多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「環境破壊」が密接につながっていることはあまり知られていません。池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)のなかで、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと環境について解説します。

コーヒーを飲む人が、意識すべき「つかう責任」

現地の「つくる責任」と、消費国の「つかう責任」をつなぐ仕組みの一つとして、コーヒーに関わる様々な認証プログラムがあります。最近はスーパーの店頭でも認証ラベルのついた製品を見かけるようになりました。

 

日本では、フェアトレード・ラベル・ジャパン(フェアトレード・インターナショナルの構成メンバー)、レインフォレスト・アライアンス、UTZのマークを見かけることが多いようです。スミソニアン(R)協会による、バードフレンドリー(R)プログラムの製品も見かけます。

 

最初の3団体は国際的なネットワークを持つ、規模の大きい団体です。3団体に比べるとやや規模は小さくなりますが、バードフレンドリー(R)にも、12カ国、5,000戸以上の農家が参加しています。

 

コーヒー生産は環境や社会問題と密接に関わるため、認証団体が審査対象とする基準の多くが、SDGsの項目を横断的にカバーしています。そこで、各団体が特に重点的に取り組むSDGsの項目のみをまとめたのが図表1です。

 

なお、「レインフォレスト・アライアンス」と「UTZ」は2018年に「レインフォレスト・アライアンス」として合併しています。合併後の「レインフォレスト・アライアンス」は、2021年7月から新しい認証基準の運用を開始することを決定しており、その内容は2020年6月に発表されました。

 

図表1では、2021年7月まで使われる両団体のそれぞれの基準と、2021年7月以降に運用される新基準の双方を掲載しています。認証団体が審査する項目の内容には、大きく分けて、環境、社会、農園管理の3つの分野があります。審査基準は団体ごとに異なり、団体によって力を入れている分野では、より細かい内容が定められています。

 

[図表1]
[図表1]各認証プログラムの概要

 

例えば、フェアトレードは人権の保護や小規模農家への配慮、レインフォレスト・アライアンスは環境保全、UTZは農園管理やコーヒー豆のトレーサビリティなどに特に力を入れています。

 

学術研究団体であるスミソニアン(R)協会によるバードフレンドリー(R)プログラムは、渡り鳥の保全に注力をしており、認証ロゴとともに販売される製品のロイヤリティの一部は、スミソニアン(R)渡り鳥センターの調査研究費用に役立てられます。各団体とも、コーヒー生産における課題や可能性に着目し、改善したい、という点では思いが一致しているため、審査する項目には共通点があります。

 

ただ、それによって各認証団体の内容の違いが、わかりにくくなっていることは否めないかもしれません。そしてこれは、参加する農園側にとっても共通する悩みでもあり、農園としてどの認証を取得すればよいのかがわからない、という声も聞かれます。

 

このため2018年に、3つの大きな認証団体のうち、「レインフォレスト・アライアンス」と「UTZ」の2団体が合併したことは、コーヒーを作る側にとっても、使う側にとっても、認証市場を整理し、各団体が目指す目的への理解を深めることに貢献すると言えるでしょう。長期的には、認証コーヒー市場自体の成長につながることが期待されます。

 

注目のセミナー情報

【国内不動産】4月25日(木)開催
【税理士が徹底解説】
駅から遠い土地で悩むオーナー必見!
安定の賃貸経営&節税を実現
「ガレージハウス」で進める相続税対策

 

【資産運用】5月8日(水)開催
米国株式投資に新たな選択肢
知られざる有望企業の発掘機会が多数存在
「USマイクロキャップ株式ファンド」の魅力

次ページコーヒー業界に広がる「つくる責任」への取り組み
コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧