年金財政の悪化、終身雇用制度の崩壊、インフレ……様々な社会的背景により、公的年金だけで豊かな老後を過ごすことは難しくなってきています。今回は、経済学者トマ・ピケティの本『21世紀の資本』から「株式投資」の必要性について考えます。※本連載は、石田昇吾氏の著書『人生100年時代の着実なお金の作り方 最も堅い資産形成術と税対策』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

株式を保有して「持てる者(資産家)」を目指すべき

なぜ、株式への投資が必要なのか。それは「歴史が証明しているから」です。2014年、フランスの経済学者トマ・ピケティの書いた『21世紀の資本』(みすず書房)という本が世界中で大ヒットしました。注釈を抜きにしても608ページもある大著です。

 

この本の中でピケティは「r>g資本収益率(r)は概ね経済成長率(g)を上回る」と言っています。株や債券、不動産などに投資することで財産は増え、そうした財産の成長率は、常に労働者の賃金上昇率よりも高くなるという意味です。

 

【図表2】「r>g」のポイント

 

つまり、「持てる者(資産家・資本家・富裕層)」は資産を保有しているだけで大きな利益を得られるけれども、「持たざる者(労働者)」は働けど働けど楽にはならず、その格差は広がっていく一方。労働者も「持てる者」の側に回るべきだというのです。

 

では、どうやって「持てる者」の側に回ることができるのか? それを可能にするのが株式を所有するということです。【図表3】を見てください。

 

【図表3】1米ドルの価値の変化

 

これは、1800年に投資した1米ドルの価値の変化をグラフにしたものです。1800年に1ドルだった株価は、2001年にはなんと75万5163ドル。つまり、200年間でそれだけの経済成長をしたということです。長期的に見ると株価の伸びに勝るものはないということの裏づけと言えるでしょう(年利7%以上で回っている計算)。

 

また、税制面でも株式投資は有効です。今、自分が働いて稼いだお金に対する最高税率は55%です。ところが配当であれば、どれだけ高額だったとしても20%ですみます。

 

そこで、5,000万円を給与でもらった場合と5,000万円の配当をもらったときの比較をしてみます(復興特別所得税及び基礎控除額以外の所得控除は考慮していません)。

 

①5千万円を給与でもらった場合

課税対象:5千万円-220万円=4千780万円

所得税額:(4千780万円-38万円)×45%-479万6千円=1千654万3千円

住民税額:(4千780万円-33万円)×10%=474万7千円

税額合計:2千129万円

※手取り額:2千871万円(実際には、上記以外に社会保険料もかかります)

 

②5千万円配当でもらった場合

課税対象:5千万円

所得税額:5千万円×15%=750万円

住民税額:5千万円×5%=250万円

合計:1千万円

※手取り額:4千万円

 

株による配当には、税制上の大きなメリットもあるのです。自分がせっせと働いて得るお金より、他人が稼いだお金の一部を分け前としてもらうほうが税金が安いのです。

 

石田 昇吾

クライサー税理士法人 代表税理士

株式会社TAXプラス 代表取締役

 

 

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