ユーザー目線の欠落により衰退を余儀なくされてきた「きもの業界」で、起死回生のヒット商品を生み出した女性経営者がいました。顧客目線はもちろん、自社工場を持つことの重要さ、外注先との信頼関係の大切さなど、複合的な視点から中小企業の生き残り策を提言します。

自社工場だから、顧客満足度の高い製品が実現できる

自社工場は、震災の影響で閉鎖することになった地元の縫製工場を買い取った形だったので、スタッフも引き取ることにしました。工場の購入費用は移転費用も含めて約1000万円。震災で約5000万円の赤字を抱えていた筆者の会社にとって決して軽くない負担でしたが、思い切って投資することにしました。自社工場は悲願でしたし、入手すればお客さまの要望に、より応えられると考えたからです。

 

例えば、筆者の会社の人気商品の一つである「満点スリップ エクストラ」は、S・M・L・SO・MO・LOの全6サイズを用意しています。また、色は白色、桜色、空色、薄茶色、柳色の全5色展開です。

 

つまりお客さまは、6サイズ×5色=30種類から、好みの商品を選べるのです。他社の和装肌着はM・Lの2サイズ、よくて、S・M・Lの3サイズに分かれていることがほとんどです。

 

しかし、身長が同程度であっても体型は人によってかなりの違いがあります。スマートな方なら普通サイズでいいのですが、ふっくら体型の方はどうしても窮屈な思いをすることになります。

 

そこで、普通サイズより裾周りを大きくとったSO・MO・LOを用意することで、ほとんどのお客さまにご満足いただけるようになりました。また、色も通常は白のみですが、安心をユーザーに与える色と、個性的な色をとりまぜ、5色用意して幅広い好みに対応しています。

 

こんなことができるのも自社工場があるからです。

 

実は6サイズのうち、需要はMとLの2サイズに集中しています。これらはいちばん大きなロットで製造する一方、それ以外のサイズについては販売実績から比率を割り出し、生産計画に落とし込んでいるのです。

 

ときには最小10枚単位で製造計画を立てます。外注する場合、そんな小まめな製造を引き受けていただくのは難しいですし、仮に受けていただいたとしても、価格は割高になってしまうでしょう。また、ニーズの少ない商品を多く製造してしまったら、長期にわたって在庫をもつはめになります。その点自社工場なら、小さなロットでも製造できるわけです。

 

また、自社工場をもつことは、ものづくりをするうえでのフットワークのよさももたらします。外注先の工場に試作を頼み、修正を繰り返して製品化にまで漕ぎ着けようとすると、かなりの期間がかかります。やりとりだけでもかなりの時間が必要ですし、外注先が忙しい時期には試作を後回しにされたりするリスクもあるからです。これに対し、自社工場ならすべて自分の都合で試作・製造ができます。これなら開発スピードは劇的に高まります。

 

中小企業が生き残るためには、なにか一つでも強みをもつことが必須だと思います。そして、多彩なユーザーのニーズに素早く応えるための施策はそれぞれでしょう。でも、ものづくりをするなら、社内に製造機能をもったほうがいいに決まっています。もしくは本当に腹を割って話し合える提携先をもつことで、思いは形に近づくはずです。

 

 

髙橋 和江

有限会社たかはし代表

和装肌着製造メーカー「たかはしきもの工房」代表

きものナビゲーター

 

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