2年目は国民健康保険のほうが安くなるケースも
なかなかメリットの多い任意継続被保険者ですが、残念ながらずっと加入し続けることはできません。継続して加入できる期間は2年間です。
ここで気をつけてほしい点が1つあります。加入は任意であっても、途中で好き勝手にやめることはできないのです。再就職で健康保険に加入する場合などを除き、原則として2年は継続しなければなりません。
1年を経過すれば、だいたい国民健康保険のほうが安くなるものですが、これは悩ましい問題だともいえます。
国民健康保険の保険料は前年の収入に応じて計算されるものの、任意継続被保険者は2年間は固定されます。退職後に大幅な収入ダウンがあったときには、2年目は国民健康保険のほうが安くなるというケースもありうるのです。
メリット・デメリットを考えたうえで、よりよい選択をしてください。
割安だが75歳まで脱退不可「特例退職者被保険者制度」
退職時に特定健康保険組合の被保険者であった人は、特例退職者被保険者制度を選ぶことも可能です。これは厚生労働省に認可を受けた特定健康保険組合が、市区町村にかわって退職者医療を行うシステムです。とはいえ特定健康保険組合は数が少なく加入条件も厳しいため、実際に利用できる人はかなり限定されているものです。
被保険者だった期間が定められた年数以上あること、老齢厚生年金などの受給権があることが要件となります。医療費の自己負担は原則3割でほかの健康保険と同じですが、一定額を超えた分は払い戻しがあったり、家族療養付加金などの給付が受けられます。
保険料も任意継続被保険者と比べると通常割安です。ただし、通常は年々上がっていくので注意してください。
また、一度加入すると75歳になるまで脱退はできません。途中で国民健康保険のほうがお得かなと思っても、変更はきかないのです。国民健康保険と特例退職者被保険者制度、どちらを選ぶかはよく考えて決めましょう。
年収130万円未満なら「家族の被扶養者になる」手も
どの健康保険を選ぶにせよ、保険料の負担は発生します。ところが、保険料が一切かからない方法もあります。配偶者や子どもの扶養になるのです。3親等内の親族であれば扶養に入ることができ、扶養家族が増えても保険料は同じです。
家族への負担もなくオイシイ方法に見えますが、被扶養者になるためには収入面での条件をクリアしなければなりません。
同居の場合は、年収が130万円未満(60歳以上または一定の障害者の場合は180万円未満)で、原則被保険者の収入2分の1未満。
別居の場合は、年収が130万円未満(60歳以上または一定の障害者の場合、180万円未満)で、被保険者からの援助額より少ないこと。
被扶養者になることを希望するなら、退職した翌日から5日以内に被保険者の勤務先へ申し出ます。手続き自体は勤務先が行ってくれます。ちょっと条件が厳しいかもしれませんが、該当する人は検討してみてはいかがでしょう。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー、AFP
中島 典子
税理士、社会保険労務士、CFP