税務調査で「名義財産か否か」の判断を分けるポイント

名義人と実際の所有者が異なる「名義財産」は、税務調査においてしばしば指摘され、問題となる。ここでは、名義預金、名義保険、名義株、無記名有価証券、名義不動産、その他の動産という6つの類型について、名義財産か否かが判断されるポイントを解説する。※本記事は、『相続税調査であわてない 「名義」財産の税務』(中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

④無記名有価証券:不正蓄財に利用された過去も…

有価証券上に特定人の名称を権利者として記載せず、その所有者を権利者と認める有価証券を一般に無記名有価証券という。無記名有価証券の特徴は、持参人払いであるという点である。そのため、かつては無記名の割引金融債(みずほ銀行〈旧日本興業銀行〉が発行していた「ワリコー」など)が不正蓄財や資金移動の手段として利用されていたが、政治家の巨額脱税事件等をきっかけに新規に発行されなくなった。しかし、現在でもかつて発行された無記名の割引金融債を相続税の申告に含めない事案があると報道されている※2

 

※2:例えば,父親から相続した割引金融債(ワリコー)を相続税の申告から除外し約8,300万円を脱税したとして,相続人が相続税法違反の罪で東京地検に刑事告発されたという報道(毎日新聞2014年1月30日)がある。

 

無記名の有価証券の帰属については、次の裁決事例が参考となるだろう。すなわち、「無記名の有価証券の帰属については、証券に権利者の表示がないので、その購入資金の出捐者及び取得の状況、その後の証券の占有・管理状況等を総合して判断するほかはないが、証券の占有者以外の者が当該証券の取得資金を出捐したとか、占有者が売買等によりその所有権を第三者に移転した後引渡しをせずに引き続き占有しているなどといった事情が認められない場合には、当該証券を現実に占有し支配管理している者がその所有者であると認めるのが相当である(国税不服審判所平成19年3月5日裁決・TAINS F0-3-309)。」

 

無記名の有価証券は持参人払いという特徴があるため、基本的に「当該証券を現実に占有し支配管理している者」に帰属する、ということになる。

⑤名義不動産:「みなし贈与」がよく見られるのが特徴

不動産の場合、特に夫婦間や親族間において、不動産の登記名義(所有割合)と不動産の取得資金の負担割合とが異なるため、贈与があったとされる事案(みなし贈与、相法9)がよく見られるところである。

 

例えば、海外不動産の購入代金をすべて被相続人が負担しており、納税者(被相続人の妻)は当該不動産に関する購入代金を負担することなくその持分の2分の1を取得したものと認められるから、相続税法9条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)により、本件不動産の持分2分の1の価額に相当する金額、すなわち、本件不動産の購入代金の2分の1の金員を被相続人から贈与により取得したものとみなすのが相当であるとされた裁判例がある(静岡地裁平成19年3月23日判決・税資257号順号10665)。

 

当該裁判例では、納税者(被相続人の妻)がその名義取得は「名義上の利益付与」にすぎず、取得した利益全額も残存していない旨主張したが、納税者(被相続人の妻)は、たとえ短期間であったとしても、対価を支払わずに本件不動産の持分2分の1を取得したことは明らかであり、よって、同持分に相当する利益を受けていることも明らかであるとして、当該主張が裁判所から排斥されている。

 

また別の裁判例では、土地贈与に伴う贈与税決定処分の適否の判断において、訴外法人から各土地を購入した当時(昭和25年頃)、納税者は父の収入によって生活を営んでおり、専業主婦であった納税者の母には、当該各土地の購入資金を出捐するだけの収入はないから、当該各土地の購入資金を出捐した者は納税者の父であると推認されるところ、父が当該各土地又はその購入資金を納税者の母に贈与したことを窺わせるに足る証拠もない本件においては、売買契約書の買受人及び登記上の所有者が納税者の母であるということだけから、母が本件各土地の真実の所有者であると認めることは相当でないとされた事例がある(東京地裁平成14年9月27日判決・税資252号順号9207)。

⑥その他の動産:記念コイン・記念硬貨・金貨など…

その他の動産で所有権の帰属が問題となるのは、例えば記念コインや記念硬貨、金貨などであろう。これについては裁決事例で、「現金及び記念硬貨の帰属については、それを第三者から預かっているなどといった事情が認められない場合には、現実に支配、管理している者がこれらの所有者であると認めるのが相当である(国税不服審判所平成19年3月5日裁決・TAINS F0-3-309)。」としており、参考になる。

 

 

安部 和彦

和彩総合事務所 代表社員

国際医療福祉大学大学院 教授

 

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和彩総合事務所 代表社員 国際医療福祉大学大学院 教授

税理士。東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設。

医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。

和彩総合事務所ホームページ(https://wasai-consultants.com

著者紹介

連載相続税調査で慌てないために…税理士が「名義財産」の基礎知識を解説

相続税調査であわてない「名義」財産の税務 第3版

相続税調査であわてない「名義」財産の税務 第3版

安部 和彦

中央経済社

民法改正や財産評価基本通達6項の考え方、生命保険を使った事業承継対策の留意点などの解説をさらに充実させた第3版。名義財産の判定に役立つ「チェックリスト」付き。

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