多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「環境破壊」が密接につながっていることはあまり知られていません。池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)のなかで、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと環境について解説します。

EUで採用されている「廃棄ヒエラルキー」とは

日本では3つのRの間に優先順位は付けられていませんが、EUにおいては以下のような廃棄ヒエラルキーというものが存在し、廃棄物に対する対応が優先度に応じて5段階に分類されています。

 

1.Prevention(プリベンション、防止) → 廃棄物を出さない。

2.Reuse(リユース、再利用) → 元と同じ目的で利用すること。

3.Recycling(リサイクル) → 廃棄物を原材料として新しい製品を作ること。

4.Recovery(リカバリー、回収) → 廃棄物を他の有用な目的に用いること。例えば、廃棄物を焼却して熱エネルギーを得ること。

5.Disposal(廃棄) → もっとも持続可能でない方法。埋め立てなど。

 

つまり、もっとも優先度が高いのが「プリベンション(廃棄物を出さないこと)」であり、もっとも望ましくないのが、「ディスポーザル(単純な廃棄)」だということです。

 

例えば、コーヒーショップにマイカップを持参したり、マグカップで提供してもらえば、持ち帰り用のカップをゴミとして出さずに済みますし(プリベンション)、持ち帰り用のカップも繰り返し使ったり(リユース)、例えば小物入れにするなど別の目的に使えば(リサイクル)、ゴミを減らすことにつながります。

 

それもできなければ、燃やして暖房の熱源にする(リカバリー)という選択肢もあります。このように「使い捨て」を当たり前にするのではなく、単純に廃棄するのはあくまでも最終手段であるという意識をすべての人がもつことが大切なのです。

 

日本のプラスチック循環利用協会は、「わが国の廃プラスチックの有効利用率は2018年では84%と高い水準」であるとし、「これは世界でもトップクラスに位置し、わが国のリサイクルへの取り組み意識の高さを示しているものといえます」と誇らしげに述べているのですが、実際にはその半分以上を「サーマルリサイクル」が占めています。

 

日本では、廃棄物を焼却して熱エネルギーを得る「サーマルリサイクル」をリサイクルの一つとして位置付けていますが、EUの基準ではそれはあくまでも「リカバリー」であり、リサイクルより優先度は低いとされています。つまり、EUの基準に従うなら、日本は明らかなリサイクル後進国であると言えるのです。

 

 

池本 幸生
東京大学東洋文化研究所教授

 

José.川島 良彰
株式会社ミカフェート 代表取締役社長

 

山下 加夏
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

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