晩年になると多くの方が抱える悩みの一つが「相続」です。最近では、個人で相続対策をする人も増えていますが、よかれと思って取った対策が税務調査で指摘されるケースもあります。そこで今回は、「生前贈与」で注意すべきことについて、3つの事例を使って税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が解説します。

相続税法改正を機に、「相続」に関する相談件数が増加

税金の減らし方や遺産分割の方法などの相談が中心だった以前に比べて、最近では、家族にお金を最大限残すにはどうしたらいいのか、といった直接的な相談が増えてきました。

 

さらに、相談される方のなかには、海外での資産運用や資産移転といったことまで視野に入れている割合も増えてきているように感じます。

 

背景には、2015年の相続税法改正が大きく影響しています。この年の法改正では、相続税の最高税率が「50%→55%」に引き上げられ、加えて、基礎控除額が改正以前に比べて大幅に減少しました。

 

持ち家をもたない一般のサラリーマン家庭などでは、それほど気にする必要がないかもしれませんが、都内に土地付き一戸建てを持っている場合や、残すべき資産を築いてきた企業オーナーの方々にとっては、大きな痛手となる変更でした。

 

「日本に財産を置いておくと税金でほとんど残らないから……。」

 

相続に関する相談に来られる方は、みなさん口を揃えてこう言います。一生を通じたマネープランのなかで、少しでも家族に財産を残したいという気持ちから、自分の死後についても早期に考え、様々な方法を検討することは自然なことだと思います。

 

加えて、近年は「生前贈与」や「税金シミュレーション」などの相続に関する書籍も増え、海外の資産運用情報などもインターネットで簡単に調べて、個人でも情報に触れられる環境も整ってきました。

 

私たちのもとへの相談も、事前に相続税や贈与税について勉強してから来られる方は確実に増えており、マネーリテラシーの高まりを肌で感じています。制度や環境の変化に伴って、相続に関する個人の意識も変わってきているのです。

相続財産の申告漏れで最も多いのは「現金・預貯金等」

(※写真はイメージです/PIXTA)
税務調査で指摘されやすいものは?(※写真はイメージです/PIXTA)

 

マネーリテラシーの高まりと共に、相続に関するトラブルは減少しているのでしょうか?

 

税務署の相続税調査状況報告(令和元年度状況)では、申告漏れ相続財産として多いのが「現金・預貯金等 33.1%」として報告されています。この比率については、多少の割合上下はあるものの、ここ5年間、ほぼ変わっていません。

 

 

もちろん、複数の口座に預貯金を分散させていたことで、意図せず申告が漏れてしまうこともあるでしょう。しかし、意識的に隠そうとすることを除いて、わかりやすい資産であるはずの現金や預貯金の申告が、これほど多く漏れているのはなぜなのでしょうか?

 

実は、現金・預貯金等漏れの代表例は「名義預金」とよばれるものです。

 

名義預金とは、自分名義の金融機関口座にお金を入れておくのではなく、ご家族や親戚の名義を借りて、そこに自分のお金を預けておくことをいいます。

 

わかりやすい例でいえば、親が自分の収入(給料など)から子どもの学費や生活費のために「子ども名義」で貯金をしている場合です。口座の名義人は子どもですが、実態は親の収入を貯金したものになります。

 

親が亡くなった際、子ども名義であることを理由に相続財産から除いて申告していたとしても、税務調査では、「親の貯金」とみなされて、相続税の対象として税金を払ってくださいと指摘を受けることがあります。

 

相続税対策したつもりが、正しくできていなかった。相続に関する落とし穴の多くは、この「名義預金」に起因することが非常に多いのです。

 

なお、税務調査時においては個別事情にて判断されるので、次から説明する事例と同じ状況でも、結果が異なる場合もあります。あらかじめご了承ください。

 

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次ページ事例①:「口頭贈与」に潜む相続リスク

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