子や孫のためにコツコツ積み立ててきた預貯金も、ひとたび「名義預金」と認定されると、相続トラブルの原因になりかねません。とはいえそんな名義預金の問題も、比較的容易に解決できるケースと、そうでないケースとに二分されます。その差はどこにあるのでしょうか? 長年にわたって相続案件を幅広く扱ってきた高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

「名義」と「管理者」が違う預金=名義預金

みなさんは、「名義預金」という言葉を聞いたことがありますか?

 

親が子ども名義で預金したり、祖父母が孫名義で預金したりしているけれども、通帳と印鑑は、親や祖父母が管理している預金のことを「名義預金」と言います。

 

では、名義預金は誰のものだと思いますか?

 

名義預金については、次の2通りのことが考えられます。

 

①預金は、子どもや孫名義になっているものだから、子どもや孫に贈与されたもので、子どもや孫のものである。
 

②預金は、お金を出している親や祖父母のものである。

 

この①②の考え方によって、相続や遺産分割で、相続人間の結論が同じになる場合と結論が異なる場合があります。結論が同じになる場合はあまり揉めずにすむのですが、結論が異なる場合は、しばしばトラブルに発展しがちです。

 

まずは、結論が同じになる場合について説明します。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

〈ケース1〉相続人それぞれに1000万円が残された場合

Aさんには、XさんとY子さんという子どもがいます。Aさんは、不動産(2億円)のほかに株式(5000万円)、預金(3000万円)を残して亡くなりました。また、Aさんは、Xさん名義で預金を1000万円、Y子さん名義で預金を1000万円残しました。

 

まず、上記の①の「預金は、子どもや孫名義になっているものだから、子どもや孫に贈与されたもので、子どもや孫のものである」という考え方に基づき、Xさん名義の預金、Y子さん名義の預金をそれぞれAさんから贈与を受けたものだとすると、XさんとY子さんそれぞれに1000万円ずつの特別受益があることとなります。

 

特別受益は、遺産に加算して、相続分を計算しますから、遺産は3億円で、Xさん、Y子さんの相続分はそれぞれ1億5000万円となりまず。すでに1000万円ずつの預金を取得していることから、遺産から1億4000万円ずつ相続することとなります。

 

これに対し、②の「預金は、お金を出している親や祖父母のものである」という考え方に基づき、Xさん名義、Yさん名義の預金はAさんの遺産だと考えても、遺産は全部で3億円あることとなり、XさんとYさんの相続分は2分の1ずつですから、1億5000万円ずつ相続することとなります。

 

つまり、①の考え方を取っても、②の考え方を取っても、結論は同じになります。

 

したがって、名義預金があってもあまり揉めることはありません。

 

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