アパート経営が「比較的手間のかからない、入居者を待っていればいいもの」であった時代は終わりを迎えつつあります。少子高齢化によって人口減少社会に突入した日本において、アパート経営で利益を出すには工夫が必要です。業界を取り巻く厳しい現況を専門家が分かりやすく解説します。

賃貸市場の競争激化…「貸し手優位の時代」は終わった

借り手が減って貸し手が増えれば、当然、賃貸市場の入居者獲得競争は激しくなり、その競争の度合いは年を追うごとに激化していくでしょう。

 

市場競争というのは、他の業界では特に珍しくはなく、当たり前のことです。しかしわが国においては、「部屋が空けば、何もしなくてもすぐに次の入居者が決まる」という住宅不足の時代が長く続いていたため、賃貸市場に競争という概念はありませんでした。

 

貸し手同士で競争する必要などなく、オーナーが入居者に対して「部屋を貸してやる」という態度でした。貸し手優位の時代だったということです。

 

ところがこれからは、同エリア内における競争が激化し、「隣のアパートは満室なのに、自分のアパートは空室だらけ」という事態が当たり前のように起こる時代になることが予想されます。アパート経営のやり方によって、勝ち組と負け組がはっきり分かれてしまう、アパートの二極化現象が起きるのです。

 

「入居者に選ばれるアパートと選ばれないアパート」それが明確に分かれてくるでしょう。

 

しかし、資本主義経済において競争はある意味当たり前の原理です。いままで賃貸市場は数少ない例外の一つでしたが、今後は他の業界と同じように、競争市場になっていくというだけのことです。

 

その競争に勝ち残っていくためには、「競争のなかでの経営」という意識を持って、様々な工夫を実行していく必要があります。

 

いまはまだ快適に感じられるかもしれませんが、賃貸市場という環境は、少しずつ温度が上昇しているお風呂のようなものです。ただ漫然と現状に甘んじていると、気がついたときには入っていられない温度になってしまい、ゆでガエルのようになったオーナーは、経営悪化により、市場からの退場を余儀なくされてしまいます。

 

ですから当然、水で埋めたり、火力を調整したりと、対策を講じる必要があります。アパート経営も競争社会に突入したという認識のもと、手を打たなければなりません。アパートオーナーはどのように生き残っていくかということを、真剣に考えなければいけない時代になってきたのです。利益を出すための企業間競争と同様の現象が、アパート経営の世界でも今後本格化していくということです。

いかに費用を抑え空室を埋めるかが、アパート経営の肝

需給バランスの変化により大競争時代に突入した賃貸市場において、アパート経営を行う上でオーナーにとっての最大の問題は空室です。自分のアパートに入居者が入らないために賃料が得られないという状況ですから、企業で言えば、売上が上がらない、もしくは極端に下がってしまうということですので、当然、死活問題となります。

 

つまり、これからのアパート経営の肝は、まずはいかに空室を埋めることができるか(入居者を獲得することができるか)という点に尽きるでしょう。

 

ただし、空室を埋めるためにコストを無制限にかけるわけにはいきません。あくまでもアパート経営は利益を出さなければいけないものだからです。すなわち、できるだけ費用をかけずに空室をどうやって埋めるかがアパート経営の本質とも言えます。

 

そこで、これからの時代にアパート経営において生き残っていくためには、競争に勝って利益を出していくための専門知識とノウハウが不可欠となります。専門知識とは、不動産そのものに関する知識、税務・法務の知識、改修工事の知識・ノウハウ、入居者募集(リーシング)のスキル、さらには人に気持ちよく働いてもらうためのコミュニケーションスキルであったりというものです。そして、競争社会においては、専門知識やノウハウは高度化していきますので、それらをより多く(深く)身に付けるための努力が必要となります。

 

現在のような、インターネットの普及が爆発的に進んだ情報氾濫社会においては、少しでも有利な条件で部屋を探そうと、入居希望者の目が厳しくなっています。供給過剰によって、多くの空き部屋のなかから選び放題という状態です。

 

※総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
[図表2]空き室および空き家率の推移 ※総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成

 

これだけ時代が変わり、需要と供給のバランスが変化している状況下、住宅不足の時代のような考え方や方式がそのまま通用するわけがないのは、容易におわかりいただけるでしょう。

 

そうです、もういままでのやり方では、空室は埋まりませんし、利益も出ません。

 

にもかかわらず、この業界において、この変化にきちんと対応しているオーナーや管理会社は、残念ながらまだ極めて少数であるというのが現実です。

 

それは見方を変えれば、早い段階でこの変化を見抜き、早い段階から対応を始めるオーナーだけが、この競争社会において生き残るための大きなアドバンテージを得ることができるということでもあります。

 

 

大谷 義武

武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役

 

太田 大作

武蔵コーポレーション株式会社 専務取締役

 

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大谷 義武,太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

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