少子高齢化が進むなか、医療業界では「生き残り」をかけて患者の奪い合い競争が激化しています。患者に求められ、選ばれるクリニックになるにはどうすればよいのでしょうか。自らもクリニックを経営する筆者は「スタッフの育成」が重要であると語ります。医師さえ失職しかねないAI時代だからこそ、人間しかできない仕事について考えてみましょう。※本連載は、梅岡比俊氏の著書『クリニック人財育成18メソッド』(医学通信社)より一部を抜粋・再編集したものです。

スタッフの主体性が「患者が求める医療」を実現

極論を述べましたが、医師であろうが、看護師であろうが、医療事務スタッフであろうが、マニュアルに書いてある通常の業務以外に、どれだけ患者さんが求めているものを提供できるかが、重要になってくると考えるのです。目の前にいる患者さんに対して、どういう言葉掛けをすれば喜んでもらえるか、どういうことをすれば安心してもらえるか、どうしたら満足してもらえるか、そして納得してもらえるか――。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

クリニックは、痛みや苦痛を取り除くために存在するのですから、クリニックのスタッフは一人ひとりが、常にそのことを意識して考えて、主体性をもって行動を起こすことが、個人としても一つのクリニックとしても不可欠になると考えます。

 

例えば、診察のオペレーションを見ても、今まで当たり前になされていたことで、患者さんとのトラブルが発生したり、患者さんからご指摘をいただくことがあると思います。そうなったときに、その問題や課題が、なぜ起こったのか、どのようにしたら解決できるのか、どのようにしたらそういうミスが減るのか、といったことを考えることになりますが、そのときがスタッフ一人ひとりが考えるきっかけになります。ヒューマンエラーは絶対にゼロにできませんが、ダブルチェック、トリプルチェックにより、未然に防げます。

 

何もむずかしいことを考えなくても簡単なことでいいのです。スタッフ一人ひとりが主体的に考えるというと、何かとても大仰なことを思い浮かべるかもしれませんが、目の前のちょっとしたことでいいのです。

 

また、ちょっとした提案を活かしていくためには、提案を受け付ける環境が大切です。これは組織の成熟度に関係すると思うのですが、一人の提案に対して全員で検討することも含んだうえで、スタッフの主体性を大事にするクリニックの風土をつくることや、主体的に行動できるスタッフを育てることが重要です。

 

組織のなかで、自分がメッセージを出して影響力を出せることは、スタッフが輝いて積極的に働くことにつながります。また、提案するときに理論付けて話せるかや、普段から周りのスタッフとのコミュニケーションをうまく取れているかも必要な要件になります。提案を受け入れてもらうには、何を言うかも大事ですが、それ以上に、誰が言うかも大事なのです。言うに足る人物になるためには、相手に信頼してもらえるような自分の人間観や道徳観などを磨いていないとうまくいきません。

 

私は、医療スタッフには、本来人が好きだからなるのだと思うし、人が嫌いな人は医療の道には来ないと思っています。その前提で話をするならば、患者さんを元気にするのは医師だけの仕事でないと考えます。患者さんに対して、クリニックの全スタッフが医療提供者として、患者さんと対面し、主体性をもって患者さんが求めていることを瞬時に察知し、適切な言葉掛けをすることで、患者さんの気持ちが救われることがあるのです。

 

私のクリニックで働くスタッフには、自分の言葉掛けや態度一つで患者さんの治癒率も変わるのだという気持ちをもってやっていてほしい、と常々話しています。

 

 

梅岡 比俊

医療法人 梅華会 理事長

 

 

クリニック人財育成18メソッド

クリニック人財育成18メソッド

梅岡 比俊

医学通信社

女性スタッフのマネジメントに失敗し、人材不足に陥っている…。医療現場でのお悩みを解決した書籍! 成功しているクリニックの最大の秘訣は「優秀なスタッフの育成」にあり! スタッフの能力と積極性を育て、活気に満ちた…

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