あまり知られていませんが、子どものない夫婦の場合、いずれかが亡くなると配偶者の親きょうだいにも相続権が発生します。保有財産の構成や親族関係によっては不本意な事態になりかねないため、事前対策が必要です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

コロナ禍で考えた「子のない夫婦の財産の行方」

今回のご相談者は、50歳の会社経営者の永井さんです。永井さんは大学卒業後、大手商社に就職しましたが、その後起業しました。経営はうまくいき、ある程度会社が大きくなったところで売却し、そこで得たお金でまた新しく会社を興したそうです。こちらも順調に業績を伸ばし、資産も順調に積み上がっているといいます。

 

永井さんは30代後半になってから、7歳年上の妻と趣味を通じて知り合い、意気投合。すぐに結婚しました。妻は美術大学を卒業後、制作会社で管理職をしていましたが、ハードワークだったため、結婚を機に退職。その後はフリーランスのグラフィックデザイナーとして働いています。もともと技術が高かったこともあり、会社員時代の伝手でいまは多くのクライアントを抱えています。

 

 

子どもがいない永井さん夫婦は、お互いのキャリアを尊重しながら生活しています。また、永井さんの妻は資産家の出身で、独身の弟がひとりいます。妻の両親は数年前に他界しており、都内の一等地にある自宅は妻の名義です。永井さんは独身時代に購入したマンションのほか、会社経営で得た収益で複数のマンションやアパートなどを購入し、賃貸収入を得ています。

 

2人ともそこまで倹約家ではないとのことですが、築き上げた資産はかなりものです。

 

50歳になった永井さんは昨年からのコロナの影響もあり、いつどのようなことがあるかわからないと不安を覚え、先々のことをきちんとしておきたいと考えたとのことでした。

 

永井さんには、既婚で3人の子を持つ姉がいます。妻には、年の離れた独身の弟がいます。それぞれの両親はすでに鬼籍です。

 

「夫婦とも仕事が趣味のような人間で、お互いの仕事を尊重しつつ、なんとかここまでやってきました。ずっと働き続けるつもりですが、もしいまやめたとしても食べていけるぐらいの資産は築いています。ただ、懸念しているのは、われわれのきょうだいのことなのです」

 

永井さんの育った家は一般的なサラリーマン家庭で、実家は賃貸マンションです。数年前に両親が亡くなったときも遺産は数百万円程度の現金のみで、永井さんは自分の相続分を姉に譲ったそうです。

 

「私の姉と妻の弟に問題がありまして。私は昔から姉とそりが合わず、関係が非常に悪いのです。妻の弟は借金癖があり、仕事が続きません。妻の両親が亡くなったときには、かなりの金額を相続したらしいのですが、すべてギャンブルで失ってしまい、いまは音信不通です」

 

数年前の永井さんの母親の葬儀の席で、姉は妻に甥姪の学費を援助するよう頼んだのだそうです。永井さんの姉は結婚が遅かったため、3人の子どもたちはまだまだお金がかかる年齢です。

 

妻が永井さんと直接話すようやんわり水を向けると、「あなたのところの財産は、どうせ全部うちの子たちのものになるのに!」と言い捨てられ、妻は驚愕。それを聞いた永井さんは、姉に文句をいってやると息巻いていましたが、その後姉から連絡が来ることはありませんでした。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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