2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されており、「事業承継」や「M&A(企業の合併と買収)」による対策が急がれています。今回は、後継者が見つからず債務超過の状態で「廃業」を選択した場合、負債をどう処理するかを中心に解説します。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。
残った負債の内容次第で、会社清算の手続きは異なる
会社を清算し、負債を最終的に処理する手続の内容は以下のとおりです。
①破産
負債がどんなに多くても、また税金や従業員への未払給与などどのような内容であっても対応が可能です。裁判所は申立てがあれば、第三者の弁護士を破産管財人に選任し、その後は破産管財人が財務処理や債権者対応を行います。なお、前社長は破産管財人に協力しなければなりません。残務処理が終了して資金が残っていれば、管財人によって債権者に対して配当が行われます。
税金と従業員への未払給与は他の債権に対して優先して支払がなされる債権ですが、会社に資金が残っていなければ全額の支払ができずに破産手続は終了します。ただし、従業員の未払給与の一部については立て替えて支払ってもらえる制度もあります。
②特別清算
特別清算も裁判所の手続ですが、管財人は選任されず、会社の清算人が手続を行うことになります。通常はすべての債権者と平等な弁済率での弁済条件にて合意し、その合意の履行をもって終了することが多く、債権者と協議の上で合意を得る手続となることから私的整理に分類されています。
一般債権者も対象とすることができ、全員の賛成がとれない場合には多数決によって決めることもできます。なお、他の私的整理と同様に、税金や従業員の退職金など優先債権が残ってしまっていて全額返済ができない場合には、他の金融負債等への支払がまったくできないことになるため話し合いの余地がなく、利用ができません。
③特定調停
特定調停は裁判所が間に入って話し合いにて負債を処理する手続であるため、会社が再建する場合のほか、廃業する場合にも利用ができます。特定調停にて保有資金をもって平等に返済した後に債務免除してもらうことで、その後は資産も負債もない会社となるため、通常の清算手続を実施することになります。
④地域経済活性化支援機構
時限立法により設置されている機関です。現在は保証債務を経営者保証ガイドラインによって処理することと会社を清算することを一体として実施する場合にのみ支援しています。金融負債のみを対象とするため、それ以外の負債が残ってしまう場合は利用できません。
負債を残して廃業したら、「保証人」はどうなるのか?
負債が残ってしまう形にて廃業した場合、その保証人には保証債務の履行が求められます。金融負債の経営者保証については、「経営者保証ガイドライン」が制定されており、誠意をもって会社を整理した場合には、その保証債務についても特定調停などの私的整理において一定条件の下で免除してもらえる可能性があります。
さらに、状況によって、華美でない自宅や将来の生計費をも残した状態で保証債務の免除を受けることもあり得ます。専門の弁護士に相談して対応することになります。
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Ginza会計事務所
公認会計士・税理士
1962年新潟県柏崎市生まれ、明治大学商学部卒業
高野総合会計事務所パートナーを経て、Ginza会計事務所創立(代表)
現在は、事業再生、事業承継、M&A、財務・税務DD、価値評価、税務支援等の業務、及び経営者の参謀役に注力。
事業再生研究機構理事
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髙井総合法律事務所
弁護士
1992年司法試験合格、1995年第二東京弁護士会弁護士登録。あさひ法律事務所(現あさひ法律事務所、西村あさひ法律事務所)アソシエート弁護士勤務、須藤・高井法律事務所パートナーを経て、髙井総合法律事務所開設(代表)。
企業法務、企業組織再編実務、企業再建実務、中小企業関係実務など幅広く業務を行っているほか、『ケーススタディ事業承継の法務と税務』(ぎょうせい、2018年)など事業承継に関する書籍や記事を多数執筆。
現在、日本弁護士連合会日弁連中小企業法律支援センター副本部長、中小企業政策審議会臨時委員(経済産業省)、「事業引継ぎガイドライン」改訂委員会委員(中小企業庁)、事業引継ぎ支援事業の評価方針検討会委員(中小企業基盤整備機構)、日本商工会議所経済法規専門委員会委員など務める。
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OAG税理士法人
税理士
1965年山梨県生まれ。半導体商社勤務を経て、現在、OAG税理士法人マネジメント・ソリューション部部長、税理士。
専門誌への寄稿や講演活動のほか、経済産業省「新たな組織法制と税制の検討会」委員、「事業再生研究機構」理事、「全国事業再生・事業承継税理士ネットワーク」幹事などの委員を務める。
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株式会社UNO&パートナーズ
代表取締役
1989年株式会社三菱銀行(現、株式会社三菱UFJ銀行)入行。中小、中堅企業の法人融資を主に担当。1997年、事業会社に転じ、ベンチャー投資、M&Aを経験後、独立系のベンチャーキャピタルでフロント、バック部門を経験。2007年より安田企業投資株式会社(保険会社系ベンチャーキャピタル)でベンチャー投資、バイアウト投資に従事。
2015年7月独立行政法人中小企業基盤機構で事業引継ぎ支援事業全国本部プロジェクトマネージャーに就任(現任)。
2016年株式会社UNO&パートナーズ設立。
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上原公認会計士事務所
所長
公認会計士
関西学院大学商学部卒。2002年に北國銀行入行後、有限責任監査法人トーマツ、東京商工会議所に設置されている東京都事業引継ぎ支援センターの統括責任者補佐を経て2017年7月より中小機構中小企業事業引継ぎ支援全国本部のプロジェクトマネージャーに従事。
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