Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

オークション会社は血眼で作品を探している

〝劇場化〟するオークション

 

近年のオークションは、“劇場化”しています。高額で落札され、その金額が多くの人にセンセーショナルな話題として伝わることで、オークション会社は、2匹目、3匹目のどじょうを探したいと、ますますドラマティックにオークションを演出していくのです。果たして落札された金額が、実勢価格とどれだけ対応しているのかは、かなり怪しいところでもあります。

 

オークション・カタログを見ればわかりますが、作品写真の下には、落札予想価格というものが存在します。この価格は実勢価格にある程度対応した値段で、セカンダリー・ギャラリーなどで売買される価格に対応したものです。

 

落札予想価格には幅を持たせていて、市価の7~8割の値段で掲載されていることが多いですが、入札する人たちにやる気になってもらうために低めに価格を抑えています。実際、このあたりの金額で落札される、買い手にとっては幸運な作品もありますが、名品と言われるものだと、それとは逆に落札予想価格をはるかに上回り、とんでもない価格まで上がってしまうのです。

 

こういう作品を欲しがるのは、やる気のあるコレクターですが、概してこういう人たちは、ビジネスの成功者で社会的強者です。圧倒的に負けん気が強い人たちですから、強気で攻めていき、ライバルがいても決して引くことはありません。

 

その結果、とんでもない値段にまで競り上がるのです。クーンズの作品のように歴史的な話題作が出るとなれば、会場は一気にヒートアップして、どこまでも値が上がっていくのです。オークション会社としては待ちに待った瞬間でもあります。

 

オークション会社はこのような状況を仕掛けるために名作、傑作のたぐいを世界中を駆け巡り、血眼になって探しています。大手オークション会社のディレクターが力説していましたが、オークションの成功には、とにかく傑作(マスターピース)が必要で、いい作品を探すことさえできれば、オークションはほぼ成功したも同然と言うのです。

 

こんな高値になる状況を聞くとアート業界はいいなあと思うかもしれませんが、あまた存在する作品の中でこのような幸運に見舞われるのは、ごくわずかです。

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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