安定したクリニック運営には、優秀なスタッフに定着してもらうことが重要です。しかし、クリニックのような多忙で緊張感のある環境では、立て続けに退職者が出る「離職ドミノ現象」のリスクが高く、経営者にはそのような事態を回避する、適切な人材管理が求められます。※本記事は、蓮池林太郎氏の著書『競合と差がつくクリニックの経営戦略』(日本医療企画)より一部を抜粋・再編集したものです。

院長が頭を抱える「急な退職より悩ましい」事態とは?

労働法があるため、期間の定めのない正社員として雇用したスタッフをクリニックから解雇することはまずできません。実は、開業医にとって「急に辞められる」よりも、「なかなか辞めてくれない」ほうが悩みは深いのです。正社員より多少割高になってしまったとしても、解雇や契約終了をしやすい契約社員やパートのみで運営しているクリニックもあります。

 

まず前提として、転職市場に出てくる求職者は、能力の低い人、やる気のない人、性格に問題がある人などが少なくありません。医療事務の年俸300万円という水準は、女性の労働市場のなかでは低いほうです。看護師もクリニックの場合、当直のある病院よりは年俸が低水準です。

 

そもそもスタッフの働きに期待しすぎている開業医が多いような気もします。「一生懸命働くのが当たり前」というのは、開業医の常識ではあるかもしれませんが、「できるだけ働かないで楽してお金がもらえる」のを条件に職場を探している人は少なくありません。

退職勧奨は、弁護士や社会保険労務士の指導のもとで

ちゃんと働かないで楽をしてお金がもらえるという価値観を持った不良スタッフが許せないのか、病院勤務時代の研修医への指導癖で強い口調で指導してしまう開業医がいます。しかし、それは危険なことです。パワハラで訴えられたり、スタッフが会話を録音する、「精神的な苦痛で働けなくなった。慰謝料を払わないと訴える」などと、弁護士を通して脅されることもあります。

 

私は、不良スタッフに高すぎる給与を支払うのは大きな問題だと考えています。不良スタッフは、他の職場に移ってもそこまで稼ぐことができません。そのため、仕事がきつくてもなかなか辞めてくれません。やる気がなくても、院長との関係が悪くてもしがみつくことになります。

 

最悪、大喧嘩をして院長が退職を迫ったり、解雇してしまい、不当解雇で裁判になるか、ならないまでも数百万円の解決金を支払うはめになります。そうした医療機関の話をよく耳にしてきました。不良スタッフに落ち度があって解雇したのに500万円以上を支払ったケースなどもあります。

 

突然、仕事を何日か欠勤しても、勤務時間中にスマホゲームをしていても、院長の悪口をいっていても、すぐに解雇することはできません。退職勧奨をする際は、必ず法律の専門家である弁護士や社会保険労務士の指導のもとに行ってください。

 

改善すべき点を口頭や文章で指導する方法があります。私は渡したことはないのですが、「退職の決意をよくぞしてくれた」ということで手切れ金を支払うと、トラブルになる確率が下がるそうです。なかには、退職後のトラブルを避けるために、トラブルがなくても数万円を渡している開業医もいます。

 

 

蓮池 林太郎

新宿駅前クリニック 院長

 

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蓮池 林太郎

日本医療企画

医師である著者は、2009年に東京新宿で開業しました。競合クリニックがひしめく新宿において、決して立地に恵まれていたわけではないのに順調に経営ができてきたのは、患者さんがスマホでクリニック選びをする時代になり、その…

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