車を運転する人ならきっと、ガソリン価格の変動を気にしたことがあるでしょう。そしておそらく、わけもなく突然値上がりしたり、いつの間にか落ち着いていたり、国内の景気動向と関係があるとは思えない不思議な動きをすることに、疑問を感じたことがあるのではないでしょうか。じつは、一見不可思議にも思えるそんなガソリン価格の変動にも、経済学の原則を知れば納得の理由があるのです。経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

ガソリン価格にも「経済学の大原則」が適用される

では「経済学の大原則」はガソリン価格には適用されないのでしょうか? そんなことはありません。

 

ニューヨークで原油価格やドルの値段が決まるのは、まさに世界中の人の需要と世界中の人の供給がぶつかり合い、需要が多ければ値上がりし、需要が少なければ値下がりする…という、経済学の原理どおりの動きをするからなのです。

 

日本国内のガソリン価格といえども、日本国内で日本国内の需給を反映して動くわけではなく、世界の需給を反映して動いているわけですね。

 

では、日本国内の需要と供給の関係はどうなっているのでしょうか? その点も、実は大丈夫なのです。日本国内の需要はさまざまな要因によって動きますが、供給がそれに合わせて動くからです。

 

野菜であれば、収穫された量が決まっていますから、いくら需要が多くても収穫量以上に売ることはできません。したがって、需要が多いときは「高い値段でも買いたい」という買い手に売るだけで売り切れてしまいます。だから、高い値段になるのです。

 

しかし、ガソリンは、需要が多ければ大量の原油を輸入して精製してガソリンとして売ればいいだけなので、供給がいくらでも増やせるのです。一方、需要が少なければ売る量を減らすだけなので、やはり需要と供給は一致するのです。売り手としては、無理して「コスト+適正利潤」を下回る価格で売る必要はありませんから。

 

このように、ガソリン価格は世界情勢によって大きく上下します。本来であれば、野菜も需要が増えたら輸入すればいいのですが、野菜は輸送コストがかかりますし、海外から輸入しているあいだに鮮度が落ちたりしますから、国内だけの情勢で価格が変動します。本質的な違いというよりは、輸送の難しさ等が理由となって、ガソリンとは違う値段の決まり方となっているわけですね。

なぜ原油産地の中東ではなく「ニューヨーク」なのか?

余談ですが、なぜ、原油価格は原油の産地である中東地域ではなくニューヨークで決まるのでしょうか。おそらくそれは、世界で最初に原油の取引が行われたのがたまたまニューヨークだったからです。

 

世界で最初に、原油を買いたい人と売りたい人が10人ずつ集まってニューヨークで原油の取引が行われたとします。そうなると、11人目の売り手と11人目の買い手は、原油を売るために、買うために、ニューヨークへ行くのが一番簡単だろうと考えてニューヨークへ行くはずです。

 

そうなれば、12人目以降もニューヨークへ行くでしょうから、自然と世界中の原油の売り手と買い手がニューヨークへ行くことになったのでしょう。

 

「皆が集まる所へ行けば、取引相手が簡単に見つかるだろう」と考えて一層多くの人が集まるようになるわけですね。

 

これは「集積のメリット」と呼ばれています。原油やドルだけではなく、大都市に人が集まる理由も同じことです。仕事を探したい人は、都市へ行けば仕事が見つかると考えて都市へ行くでしょうし、労働者を探したい企業も都市へ行けば労働者が見つかると考えて都市へ行くでしょうから、一層多くの人が都市に集まるようになり、仕事探しも労働者探しも都市で行われるという状況が一層促進されていく、というわけですね。

 

今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。


 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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