「起業」が広く知られるようになった昨今。飛び抜けた才能を持つ経営者は一握りであり、起業をすれば、経験したことがなかったり興味がなかったりする仕事も訪れ、不安を感じてしまう起業家も少なくないようです。M&AアドバイザリーサービスだけでなくM&A後の統合作業や組織再編、事業再生などのサービスを提供する株式会社すばる代表取締役の牧田彰俊氏が解説します。

ソフトバンクの孫氏を真似してはいけない理由

もちろん、そこで必死に経営の勉強を重ねながら、また周囲に適切な人材を配置してサポートを受けながら、限界を乗り越えて経営者として会社と共に成長していく人もいます。IPOを実現したあとも経営トップに立ち、成長を続けている経営者はそのような人たちでしょう。しかし、すべての起業家がそのようになれるわけではありません。

 

というより、それはソフトバンクの孫氏や、楽天の三木谷氏、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井氏のように、飛び抜けた経営の才能をもち、歴史に名を残すような傑出した経営者だけが可能な、例外的なことだと考えたほうがいいのではないかと思います。

 

普通の起業家がそういった存在になることは非常に難しいことですし、また、必ずそれを目指さなくてはならないわけでもありません。0→1や1→10が得意な起業家が会社を10まで成長させたとき、「ここから先、さらに100を目指すことは自分には難しそうだから、10→100が得意な第三者にM&Aをして経営をバトンタッチしよう」と考えることは、立派な「経営判断」です。

 

そして、起業家自身はM&Aイグジットにより得られた資金で、再び自分が得意な0→1や1→10を目指し、会社や社員はグロースを得意とする新経営者のもとで、成長の果実を得るということは、それぞれの立場にとって、幸せな選択となり得ます。

 

さらに言うなら、M&Aイグジットをした起業家が、そこで得られた資金を元手に連続起業をして新たにイノベーティブな事業を興したり、あるいはエンジェル投資家になって、ベンチャーへの投資を行ったりすることは、社会全体として見ても、新産業の創出や産業活性化にもつながることであり、大いに歓迎すべきことです。

 

長期的に人口減少が進むなか、日本が今後も世界の中で一定の経済的な地位を占めていくためには、起業を含めたイノベーションを活発化し、生産性の向上や新産業を創出していくことが欠かせません。

 

その表れとして、2018年に策定された政府の成長戦略にも、2023年までにユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)を含めて、20社の有望な新興企業を育てるという目標が掲げられています。

 

しかし、日本では起業をする人の割合(開業率)が、4~5%程度と、欧米諸国のおおむね10%程度と比べて半分程度の水準にとどまっているのが現状です。開業率自体を急速に上昇させることは難しいでしょう。

 

その点からも、一度起業を成功させた起業家が、連続起業家となって新規事業を興すことは、社会的にも意義が高いと考えられます。起業家個人の幸福というミクロ的な視点からも、またこれからの日本経済全体の浮沈というマクロ的な視点からも、連続起業にトライする人が増えることはすばらしいことなのです。

 

 

牧田 彰俊

株式会社すばる

代表取締役

 

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牧田 彰俊

幻冬舎MC

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