世界的な半導体不足が続いています。デジタル化の加速で需要が増し、供給が追いつかないことが理由だと考えられています。多くの企業が半導体不足によって苦戦を強いられているようですが、じつはそれが大きな商機となる可能性もあるようです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

全社同時の減産で生じる「カルテル的な効果」とは?

自社だけの減産であればライバルに客を奪われるかもしれませんが、今回は世界中の自動車メーカーが同様に半導体不足に悩まされていて、減産を迫られることになるかもしれません。そうなれば、ライバルも減産するのでライバルに客を奪われる心配はなさそうです。

 

しかも、世界的規模で自動車の生産が減れば、需要と供給の関係で自動車が値上がりするかもしれません。公表されている価格は変わらなくても、店頭での値引きが不要になったり、「中古車を高値で引き取ることによる事実上の値引き」が不要になったりすれば、値上がりしたのと同様の効果をもたらすでしょう。

 

これは、結果としてカルテルにより値上げしたのと同様の効果を自動車各社にもたらします。しかも、カルテルよりもはるかに好ましい面もあるのです。

 

まず、カルテルであれば、公正取引委員会に独占禁止法違反で摘発されかねませんが、今回はそうしたリスクはありません。むしろ「品薄で困っているので…」といえば、消費者もマスコミも同情してくれるかもしれません。カルテルがバレてバッシングされるのとは大違いです。

 

もうひとつの大きな違いは、カルテル破りの心配がないことです。カルテルであれば、「ライバルたちが約束を守って高値で売っている間に、自分だけ約束を破って安売りすることで、ライバルの客を奪おう」という会社が出てくるかもしれません。

 

とくに自動車の場合は、中古車の下取り価格を高くするなど、こっそり値下げをすることが容易でしょうから、カルテル破りのインセンティブは大きそうです。

 

各社が独自の判断でカルテル破りをする可能性もあるでしょう。また、一社がカルテルを破ったことがなんとなく他社に感づかれると、ほかのカルテル参加者も「それならわが社も」ということになりかねず、カルテルが崩壊していく事態も考えられます。このような点が「カルテルを維持するのは難しい」といわれるゆえんです。

 

しかし今回は、各社ともに売るものがないのですから、値下げをしてライバルから客を奪うことができません。「カルテル破り」は起きないわけです。つまり、自動車各社にとって、今回の事態は大きなチャンスになるかもしれません。

 

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