(※写真はイメージです/PIXTA)

デカルトの活躍した17世紀は、ルネサンスや宗教改革を経て、信仰と学問とがはっきりと分離してきた時代でした。理性で真理を探究していこうというデカルトの主張は、現代風にいえば、合理的であることでした。この意味で、デカルトは近代合理主義を確立した哲学者であるといえます。※本連載は、堀内勉氏の著書『読書大全』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

デカルトの「我思う、ゆえに我あり」の価値

ホッブズと同時代にフランス哲学界に登場するのが、「近代哲学の父」「大陸合理論の祖」デカルトです。考える主体としての精神とその存在を定式化した、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」は、哲学史上、最も有名な命題のひとつであり、理性で真理を探求していこうという近代哲学の出発点となりました。

 

17世紀科学革命の時代に生きたデカルトは、数学・幾何学によって得られた概念こそが疑い得ないものであると考えました。宗教的権威に基づく先入観を排除し、「全てのことを疑う」ことを通して確実な知識を求める方法的懐疑(確実なものに到達するまでの手段としての懐疑)を進めた結果、神の存在さえも疑うようになった当時の懐疑主義に対し、全てのものが懐疑にかけられた後にどれだけ疑っても疑い得ないものとして精神だけが残るとの結論に至りました。

 

このように、「存在について語る前にどのようにして存在を認識するかを論じなければならない」というデカルトの主張は、世界の普遍的原理を理性で認識しようという形而上学の中心課題を、存在論(ontology)から認識論(epistemology)へ転回させることになりました。

 

また、デカルトは、空間的広がりを持つが思考ができない「物質」の世界と、空間的広がりを持たないが思考はできる「心」という二つの実体があるとして、これらは互いに独立して存在するという物心(心身)二元論(mind-bodydualism)を唱えました。これは、哲学における伝統的な問題であり、現在では、認知科学、神経科学、理論物理学、コンピューターサイエンスにおいても議論されています。

 

イギリス経験論では、人間は経験を通じてさまざまな観念・概念を獲得するとして帰納法的に真理を探るのに対して、デカルトに始まる大陸合理論(continental rationalism)では、人間は生まれながらにして基本的な観念や理性(生得観念)を持っていると考えます。そして、その理性的認識によって真理を捉え、そこからあらゆる法則を導こうとする演繹法が真理探求の方法とされました。

 

 

堀内 勉

多摩大学社会的投資研究所 教授・副所長

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

堀内 勉

日経BP

人類の歴史と叡智を力に変える「最強のブックガイド」。 本書では、歴史に残る300冊を厳選し、さらにその中から200冊に絞って紹介しています。 300冊の一覧表を見ることで、書籍における知の進歩を一望できます。 本…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧