哲学の三つの古典的分類のうち、認識論と存在論について見ていきましょう。認識論とはヒトの外の世界を「どのようにして認識していくか」を問うもので、存在論とは存在全般が共通して持つものを解明するものです。時代が進むにつれてそれぞれの研究は進められながら、どちらか一方が重視されることを繰り返してきました。※本連載は、堀内 勉氏の著書『読書大全』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

近代的な認識論を確立させたデカルトとその後の発展

ただし、アリストテレスの「第一哲学」が、「諸存在(万物)の根本的な原因・原理」をめぐる、感覚・非感覚・論理・数学・神学などを横断する幅広い考察であったのに対し、近代以降の形而上学の考察の対象は、自然科学の発展に伴い一部の狭い領域に押し込まれ、変質してきています。

 

これに対して、近代的な意味での認識論を成立させたのが、「近代哲学の父」といわれるルネ・デカルトです。デカルトは、「本当に確かなことはなにもない」という全面的な懐疑主義(skepticism)に対して、「我思う、ゆえに我あり(コギト・エルゴ・スム)」という言葉で、全ての事物を疑った(方法的懐疑)後に純化された精神だけが疑いえないものとして残ることを主張しました。

 

デカルトが認識の起源は理性(合理主義)であるとしたのに対して、「イギリス経験論の父」といわれるジョン・ロックは認識の起源は経験(経験主義)であるとしました。さらに、この合理主義と経験主義を統合したカントの「コペルニクス的転回」以降、哲学は認識論に傾斜することになります。

 

しかし、第一次世界大戦以降、存在論を認識論より体系的に上位に位置づける実在論的存在論を提唱したニコライ・ハルトマンの批判的存在論や、存在一般への問いの前に人間存在への問いが先行しなければならないというマルティン・ハイデッガーの基礎的存在論などにより、「認識論から存在論へ」という揺り戻しが始まることになります。

 

 

堀内 勉

多摩大学社会的投資研究所 教授・副所長

 

 

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

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堀内 勉

日経BP

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