紀元前500年頃を中心とする前後300年は「枢軸時代」と呼ばれ、ギリシア、インド、中国と東西を問わず哲学が生まれた時代です。哲学はその後、さまざまな学問の源流となりました。人間の思考全体の流れをつかむために、西洋哲学の成り立ちについて見ていきましょう。※本連載は、堀内勉氏の著書『読書大全』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    西洋哲学の二大潮流…プラトンとアリストテレスの違い

    このように事物には本質があるというプラトンのイデア論を継承しながらも、存在への問いを明確に立てて体系化したのが、プラトンの弟子で「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスです。

     

    アリストテレスは、イデアが個物から超越して存在するというプラトンの考えを批判し、事物の本質を個々の事物(個物)に内在するものとして捉え、まず現実の存在を見るべきだとする現実主義的な立場をとりました。つまり、プラトンが現実から超越したものとしてイデアを捉えたのに対し、アリストテレスはイデアは個物に内在するものだと考えたのです。

     

    そしてアリストテレス以後、18世紀のカントの認識論(Epistemology)における「コペルニクス的転回」(まず対象がありそれを主観が認識するという旧来の考え方を逆転させ、対象は主観のあり方によって構成されるとした、コペルニクスの地動説に匹敵するような逆転の発想)までは、あらゆる存在するもの(存在者)が存在していることの根本的な意味を問い、存在そのものの根拠について考察する存在論(ontology)が、西洋哲学の中心を占めることになります。 

     

    また、こうしたアリストテレスの物事の本質にまでさかのぼる根源性、現実の事物を観察しようとする経験主義的な姿勢、そして形而上学から自然学にまで及ぶ膨大な知識の網羅性は、その後長きにわたり西洋の学問的基礎を形成することになりました。

     

    こうした二人の考え方の違いは、世界に抽象的なイデアがあることを前提に観念論的に考えるプラトンに対して、実証的で経験論的な立場をとるアリストテレスというように対比され、これが西洋哲学における観念論と経験論という二つの大きな潮流につながっていくことになります。

     

    このように、プラトン以来の本質主義は、19世紀に入り、実存(現実存在)がまずありその本質は実存(行為主体)の実践によって決定される未決定なものだとする、ジャン=ポール・サルトルなどの実存主義(existentialism)的な思想家たちに批判されるまで、西洋哲学における中核的な概念であり続けました。

     

    堀内 勉

    多摩大学社会的投資研究所 教授・副所長

     

     

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    堀内 勉

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